2014年5月18日日曜日

第6回肝アンギオ研究会

2014516日金曜日


 帝京大学ちば総合医療センターでクルズスを行った後、第6回肝アンギオ研究会に参加しました。

この研究会は、首都圏で血管造影・肝動脈塞栓術を行っている内科医の勉強会です。

 今年の2月より、肝動脈塞栓術の際に用いる”塞栓物質”に新たな仲間が加わりました。従来のジェルパート(多孔ゼラチン)に加え、ビーズと呼ばれる永久塞栓球物質が使えるようになりました。

 今回は、血管塞栓用ビーズの初期使用経験と技術的工夫について有意義なディスカッションが交わされました。

 まだ経過観察期間は短いですが、比較的安全に施行されたことや治療後の画像所見の変化が従来のゼラチンと異なること、さらに施行1か月後の画像所見で効果判定した方が良さそうであることがわかりました。

 どのような腫瘍に最も効果を発揮するのか、注入(塞栓)の工夫、特に注入終了のポイントなど、これからさらに検討する必要がありそうです。




 

2014年5月16日金曜日

クルズス

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

 今日は 帝京大学ちば総合医療センター で学生の講義を行いました。

 医学部はご存知のように6年制です。1,2年生は教養、3年生は基礎医学、4年生は臨床医学、5年生は病院実習、6年生はまとめ、というのが、大きな流れです。


 房総半島の内側、市原市にあります。病院は山の上にあり見晴良好です。

5年生に対するプライマリー・ケア実習の一環として、90分の講習(ドイツ語でクルズス Kursus といいます)を担当しています。

 プライマリー・ケアというのは、患者さんの抱える問題に対して、継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスであると定義されています。

プライマリー・ケアは、欧米では家庭医が担当しています。日本ではまだ大病院志向であったり(大きいところが結局安心と思うのか)、そこで行われている細分化された医療が行われています。

プライマリ・ケアの五本柱は・・・






 これらを実践する終局的な目標は、地域での疾病予防や重症化防止に重点を置き、無駄な医療費を抑えることです。例えば高血圧、高脂血症、糖尿病をきちんとコントロールすれば、心血管系の病気のリスクを大幅に減らすことができます。

 家庭医療が充実することで、いつでも”頼れる”という安心感、医療への信頼感が強まり、地域の健康意識が向上します。結果的に無駄な検査や投薬も減り、必要なところに集中して医療費を投入できるので、国全体の医療の質が向上すると思われます。

 実際、日本では高齢化と核家族化、さらに地域の連帯が薄れていおり、今後プライマリ・ケアの実践はますます重要になってきます。

 講習では、プライマリー・ケアの実践に役立つ超音波検査の実習と、そもそも医師にならなければプライマリー・ケアの実践は不可能(笑)なので、国試対策術も教えています。




2014年5月15日木曜日

C型慢性肝炎と発がん (3)

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

C型慢性肝炎と肝がんの続きです。

 C型慢性肝炎で最も大切なことは、発がんのリスク算定に基づいて治療戦略を立てていく ことです。

 例えば、ケイコ(軽子)さん70歳で一段目だったとします。

 (女性に多いのですが、感染して時間が経過していても、アルコールの影響もなく、閉経までは、鉄欠乏状態なので、肝炎が沈静化していた結果、線維化が進んでいない患者さんが少なからずいます。)

 85歳まで生きたとして、残りの人生あと15年。一段階目の発がん率は年率0.5%以下ですから、
 生涯発がん率=年率0.5%以下x15年
          =7.5%以下 となります。
生涯発がん率は、わずかに10%以下なので、無理(身体的、経済的負担)して、ウイルス駆除を行う必要がないということになります。

ところが、シゲオ(重男)さん70歳で三段階目だったとします。
同じく残りの人生あと15年と設定します。三段階目の発がん率は年率3%ですから、
生涯発がん率=年率3%x15年
         =45% となります。
さらに10年で一段階上がるので、もう少し発がん率は上がると判断します。
だから、シゲオさんは、ウイルス駆除を検討するということになります。

 このように、一見、同じように見えるC型慢性肝炎でも、炎症の結果である肝臓の硬さによって、発がんへの道のりが全く違うこと、発がんのリスクに応じて、治療戦略をたてることが必要なのです。

 放置しておくのは最も危険です。きちんと診てもらうことが大切ですよ。

2014年5月14日水曜日

C型慢性肝炎と発がん (2)

みなさん、こんにちは。
いかが、お過ごしですか?

 昨日に続いて、C型慢性肝炎と発がんのリスクについてです。

Aさんに登場してもらい、C型慢性肝炎の程度(病気の重さ)は、肝臓の硬さで決まることをお話しましたね。その続きです。

「C型慢性肝炎は肝臓の硬さによって4段階に分けられるんです。硬さの原因はスジって言いましたよね。スジのことを線維、英語でFibrosis です。なので、頭文字であるFをとってF分類って呼ばれているんです。」

1段階目 (F1) は、軽度の線維化(少し硬い)
2段階目 (F2) は、中ぐらいの線維化(中ぐらいの硬さ)
3段階目 (F3) は、重度の線維化(かなり硬い)
4段階目 (F4) は、肝硬変(カチカチ) 

と、分けられます。

「C型肝炎に感染すると、ほとんどの患者さんは慢性化して、この階段を上がっていきます。1段上がるのに10年かかると言われているんです。だから感染してから時間が経っていると肝臓が硬くなっている可能性が高いんです。さらにGPT (ALT) が高い(炎症が激しい証拠)と、早めに階段を駆け上がってしまうんです。」


          「じゃあ、私は輸血から30年以上経っているんで、硬くなっているかも
          しれないんですね。」
          「しかもGPTは高めですし心配よね。」
「一番大切なことは、段階によってガンになる確率がまったく違うことです。F4 (肝硬変)では年率8%, F3(重度の線維化)では年率3%, F2(中ぐらいの線維化)では年率1.5%, F1(軽い線維化)では年率0.5%以下と予測されているんです。」

「ですから、今、何段階目にいるのかが、とても重要なんです。そのためには肝生検といって、肝臓に針を刺して、肝組織の一部を取り出して顕微鏡で線維化の程度を診て決めます。」


          「そうですね、私が何段目にいるのかっていうのが、大切ですね。」
          「知らなかったわ。でも肝生検はなんか大変そうですね。」


「もちろん、肝生検は必要な検査ですが、何段目にいるのか?、もっと簡単に知る方法があるんです。」
「それが簡単な血液検査で分かる”血小板数”です。血小板数は、肝臓の線維化と強い関連があります。線維化が進む(肝臓が硬くなる)と血小板は徐々に少なくなるんです。」

正常の人では、血小板数20万です。
1段階目 (F1) 、軽度の線維化の人では17万
2段階目 (F2) 、中ぐらいの線維化の人で15万
3段階目 (F3) 、重度の線維化の人で13万
4段階目 (F4) 、肝硬変の人で10万以下です。

「2割ぐらい、例外の患者さんがいますが概ね血小板数で発がんリスク(何段階目にいるのか?)が予測出来るんです」


     
           「あら、やだぁ。先生、私の血小板数は5万よ。ということはもう肝硬変なのね。」
     「どうしましょう?」

「肝硬変だからって、すぐに、どうにかなっちゃう、わけではありません。」
「発がん率が高いので、ほっといってはいけないということです。」
「4段階目(肝硬変)の発がん率は年率8%です。消費税程度と思わないでくださいね。今、74歳、あと10年寿命があったとすると、年率8%x10年で80%の確率でがんになる可能性があるということが推測できるんです。」

       
                  「そうなんですね。だから経過観察が必要なんですね。」
                 

 「わかっていただければ嬉しいです」「さらにAさんの場合、小さいけど既に発がんしているので再発率は年率20%になります。」「今回のがんは綺麗に治りますので今後の経過観察がとっても重要ですね」


               「わかりました。ありがとうございました。きちんと通いますので
                宜しくお願いしますね。」

今日のまとめ


2014年5月13日火曜日

C型慢性肝炎と発がん (1)

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

 五月も中旬になると、春から初夏という陽気になりますね。
本日の甲府地方気象台発表によりますと甲府市の最高気温は31℃でした。ただし湿度は29%で風速も3m/sほど。爽やかな一日でした。

毎週火曜日は、山梨県立中央病院 で外来診療を行っています。

 肝臓がんの患者さんを中心に診させて頂いています。そんな外来の出来事から皆さんのお役に立てそうなお話をしますね。(ガンちゃん先生を見習って頑張ります)


 本日、はじめて外来を受診した患者さんです。
74歳の女性Aさんです。保育園に勤められていましたが、定年後ボランティアで活躍している元気いっぱいっていう印象です。40歳で子宮筋腫の手術をした際、輸血したとのことでした。

そんなAさん、肝臓に腫瘍があるということです。

血液検査の結果をみますと、肝機能は比較的保たれていますが、GPT (ALT)は70ぐらいに上昇、血小板数は5万まで低下していました。

「私、注射が嫌いなんです。C型肝炎っていうことは分かっていたんですけど・・・食事とか気を付けて、無理しないようにしていればいいんじゃないかって思っていました。」

「年に1回、健診を受けていたんですが、今回ひっかかちゃって・・・」

「肝臓に腫瘍があるから、大きなところで診てもらうようにって言われたんです。」



 幸いにも、腫瘍はまだ小さく1cmほどで、しかも一つだけでした。

 Aさんに、C型慢性肝炎の程度と発がんの関係を説明して、定期観察の必要性を理解してもらいました。

「Aさん、C型肝炎にも程度(病気のおもさ)があるんですよ、皆、同じじゃぁないんですね。何によって程度が決まるかというと、肝臓の硬さなんです。」

「これを見てください。これはヒトの肝臓を顕微鏡で見た写真です。例えが悪いですが、肝臓はスーパーで売っているレバーそのものです。本来、赤くて、ツルってしていますよね。」


「3枚の顕微鏡写真を上から下に見ていくと、何か気が付きませんか?」

「下に行くにしたがって、黒い筋(スジ)が入って、ゴツゴツしてきますよね。そうです、このスジが肝臓の硬さを決めているんです。」

「職人さんの手は硬いですよね、毎日刺激(炎症)を受けることによって、皮膚に筋が入って硬くなるからです。肝臓も同じで、ずっと炎症が続くと肝組織に筋が入って硬くなるんです。」

「だから筋の入り具合(硬さ)で、C型肝炎の程度(病気の重さ)は決まるんですね。」



⇒C型肝炎の程度と発がんの関係は明日に続きます。

2014年5月12日月曜日

一寸先は・・・だから。

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

今日、悲しいお知らせが届きました。
ブログでは、努めて、明るい話を中心に書いていたのですが・・・

やはり、医療は生き様の縮図です。悲しい話もあっていいかなって、やっぱり喜怒哀楽が無いと人生つまんないと思うんです。 ”自分に正直に、何事も” ですね。

門脈動脈同時塞栓療法を行っている在りし日の岩本昭三先生(右)

 僕が憧れている医師は何人かいるんですが、その中のお一人、ガンちゃん先生こと岩本昭三先生が5月11日63歳の若さで急逝されました。急性骨髄性白血病だそうです。
 
 先日のゴールデンウイークに米国で行われた Digestive Disease Week (消化器病学のオリンピックのような学会です)で、元気に発表されている様子を、 ガンちゃん先生奮闘記 で報告したばかりなのに・・・

 ガンちゃん先生(あえてそう言わせて頂きます)のブログを見て頂ければわかりますが、個性もあり、人情もあり、そして組織に属していないので、良い意味で自由奔放で。なによりも肝癌治療に情熱をお持ちでした。

 その自論展開に、学会などでは時に理解してもらえないこともありましたが、僕はそんなことよりも、人としてのガンちゃん先生が好きでした。

 生い立ちから、医師修業時代、それから肝癌との戦い、共感すること、教えられることがたくさんありました。

 韓国済州島の学会で呑んだのは今となっては良い想い出です。ガンちゃん先生の遺志を引き継ぎ、肝癌とガチンコ勝負していきます。天国からガンちゃん先生がきっと見守っててくれると信じてます。


最後にガンちゃん先生奮闘記から引用です。

「お盆では、人の人生、寿命を考えます。

その日、その日で悔いのない一日を過ごしていきたいとつねづね思っています。つまらない後悔はしないように心掛けています。」 と

人生、一寸先は闇です。だから悔いのないように毎日を積み重ねていきましょう。


2014年3月11日火曜日

”前へ”

みなさん
こんにちは
いかがお過ごしですか?

東日本大震災から三年の月日が経ちました。
被災された方々やご家族の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。




 46億年の地球の歴史から見ると、大陸が分断したり移動していたのは、わずか2億年前です。地球は生きています。



 マントル対流による膨大な力は、プレートを動かし歪みがたまっています。プレートがいくつも重なったところに日本列島は存在します。四方を海に囲まれたこの美しい自然豊かな島は、異国の襲撃から海で守られ、独自の文化を育んできました。

 僕らの祖先は、幾度ともなく大地震や大噴火の自然災害を乗り越え、しなやかに生きてきました。でなければ、僕らは今ここに存在しえないのですから・・・

 3年の月日が経って、いまだに避難生活を強いられている方々も多くいらっしゃいます。

「これから、どう生活すべきなのか?」

 僕ら全員の問題だと思います。過去の教訓を生かし”前へ”進んでいくべきです。


 誰も教えてくれないし、国に何とかしてくれっていうのは無理だと思います。個人個人が、真剣に ”どう生きていくべきか?”考え行動するべきだと思います。

 便利さの代償として、処理方法が解決していない核のゴミを作り続け、子孫につけを払わせて良いんでしょうか?

 一人の力は微力ですが、みんなが考え行動すれば大きな力になると思います。

 まだ捨てたもんじゃないって思っています。”前へ”一緒に進みませんか?