2009年7月30日木曜日

釧路医師会 学術講演会

7月17日 金曜日
 釧路医師会主催 日本医師会生涯教育講座 学術講演会で講演させて頂きました。


 消化器内科以外の先生方もご参加頂きましたので、血小板数から推測するC型肝発癌率を中心に、進行がんの治療に偏らないように配慮させて頂きました。

 進行がんの治療や心臓病の手術など比較的脚光を浴びやすい領域です。しかし本当に大切なことは脚光を浴びることの少ない地元で黙々と患者さんと向かい合っている開業の先生方や地方病院に勤務され、第一線で頑張っている先生方の存在です。我々の領域でも、検診で肝炎を発見して頂き病院と診療所が連携して適切な治療が行われれば発癌を抑止することが出来ますし、肝癌の死亡者数も減らすことが出来ます。難しい心臓の手術も同じです。地道ですが高血圧や糖尿病、高脂血症のコントロールそして禁煙の励行などで病気を未然に防ぐことが本来の姿であり、現場の先生方が真の脚光を浴びるべきと思いました。

 医師不足の波は道東では深刻です。釧路から根室間約120km離れているのですが、1日1往復、根室から釧路まで通院専用バスが出ているそうです。朝、根室を出て2時間以上かけて釧路の3病院(市立、労災、日赤)を回り、夕方、再び2時間かけて根室に帰るそうです。同様に利尻から往復4時間かけてIFN治療を行っている患者さんも少なくないようです。冬の厳しさを考えると想像を絶します。釧路市内でも循環器の先生は市立病院に集まって医師自ら集約したそうです。行政任せにせず、誰が悪いかではなく、住民(患者さん)と医師が、日本のより良い医療のため、真剣に考える時が来たようです。

 早朝のジョギングで、かつて日本一の水揚げ量を誇った港の跡地を走りながら、自分に何が出来るか?考えさせられました。


かつて、水産加工場などで賑わっていた街並も駐車場となった空地が目立ちます。

年輪を刻んだ港のレンガ倉庫

 懇親会の後、釧路川沿いの炉端焼き「鱗」に行きました。炉の炭明かりの前で凛とした和服の女将さんが道東の海の幸、山の幸を焼いてくれました。頑張っている女将さんに元気をもらった気がしました。

 最後になりましたが、座長を務めて頂きました釧路労災病院副院長の宮城島拓人先生には大変お世話になりました。この場を借りまして感謝申し上げます。


帰りの釧路空港にあったふくろうのオブジェ

ふくろうは福老にかけて、豊に年を重ねる、不老長寿のお守りだそうです。
ギリシャ神話にも学芸と知性を司る鳥として縁起が良いとされています。


第45回日本肝癌研究会に参加して

7月3日-7月4日

第45回日本肝癌研究会が福岡で開催されました。


 肝癌に焦点を絞った研究会で、臨床研究や症例報告が主体です。日頃の臨床活動をまとめて発表することによって、同じ領域を専門とする先生方に評価して頂き、妥当性や問題点を活発に討論できる絶好の機会です。また研究会主催の全体懇親会もあり多くの先生方と交流が出来て、とても有意義な二日間でした。





 当科からは、佐藤新平先生が パネルディスカッション1「凝固療法の適応と限界及び合併症」のセッションで、「転移性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の局所制御能の検討-肝細胞癌との比較-」と口演1「進行肝癌に対する治療(動注、放射線、外科手術)」のセッションで、「進行肝細胞癌に対するIFN併用5FU動注化学療法-どのような症例にどのような基準で動注するか-」を発表しました。


発表中の佐藤新平先生


 元山天佑先生は、問題症例検討会4「肝癌診断困難例」のセッションで、26歳女性の肝腫瘍を呈示しました。診断が難しかったのですが、この検討会に呈示したことによって、「類上皮血管内皮腫」と診断されました。切除以外の治療法は確立されていないのですが、IFN併用5FU動注によって腫瘍が縮小しています。



発表前の最終チェックをしている元山先生


発表中の元山先生


元山先生の学会参加記


第45回日本肝癌研究会に参加して
 はじめまして。四月から杏雲堂病院肝臓科に勤務しております、元山天佑と申します。
私は7/3に問題症例検討会での発表のため、第45回日本肝癌研究会に参加いたしました。
初めて博多に行ける喜びもありましたが、いつもながら発表のスライド作りには苦労しました。いつも今度こそは余裕をもって準備しようと思うのになかなかそうはいきません。指導してくださる佐藤先生からは何度もダメ出しをくらい、学会前に決まっておこる親知らずの痛みに耐えながら前日ギリギリにスライドを間に合わせました。
発表当日は小尾先生、佐藤先生の発表を見に行きながら自分の発表に備え、いよいよ本番。
「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせながらなんとか最後までやり遂げ、その後の質疑応答もなんとか乗り切り無事終了。今回の発表に際して九州大学相島先生のご厚意により病理の追加免疫染色から確定診断に至ることができたことはとても大きな収穫でした。
また、多くの学会発表に触れて多くの刺激を受けました。今回の経験を忘れずにこれからも 診療に励みたいと思います。                元山 天佑


 小尾は、ランチョンセミナー4 「慢性肝炎から肝癌における治療マネージメント」で、「肝癌治療と肝癌治療後のマネージメント」と題して、当科での無痛ラジオ波焼灼療法、1554例のTAEの成績、649例の動注化学療法と179例の全身化学療法の成績さらに、東京大学消化器内科五藤先生がまとめられたラジオ波焼灼療法後のウイルス駆除の有効性について発表しました。口演4 「TACEの工夫と進歩」のセッションでは「当科におけるTAE-1500例の検討-」、ワークショップ2「肝外性再発(転移)の診断と治療」のセッションでは、「進行肝細胞癌に対するインターフェロン併用5FU全身化学療法」を発表しました。



発表中の小尾です。


 一日目終了後、研究会主催の全体懇親会がありました。国立がんセンターの高安賢一先生より、リピオドールを最初に使った経緯などをお伺いできてとても有意義な時間でした。この後は、東京大学消化器内科椎名秀一朗先生にご指導いただいた仲間が集まり懇親会、その後中洲に出て、屋台の博多ラーメンで〆をとりました。


懇親会にて、

JR東京病院赤松先生、当院元山先生、東京大学消化器内科五藤先生



 初夏の博多は、山笠祭で街中が盛り上がっていました。学会の早朝は、観光を兼ねて街をジョギングしています。その途中に撮った写真です。早朝の街を走りながら、次回の研究会に向かって、さらに肝癌と対峙するパワーが湧いてきました。


山笠の山車です


山笠祭の山車はこの櫛田神社を目指して街中を凱旋します

最後にはなりましたが、留守を守ってくれた佐藤隆久先生、菅田美保先生を始めとする東京大学消化器内科の先生方、誠にありがとうございました。この場を借りて感謝申し上げます。