2011年5月31日火曜日

肝疾患相談センター

 患者さんにお知らせです。

東京都(福祉保健局保健政策部疾病対策課)は、肝疾患に関する情報提供や肝炎患者さんの支援充実を図るため肝疾患診療連携拠点病院を指定しました。

虎の門病院 港区虎ノ門2-2-2 
相談専用ダイヤル 03-3560-7672

武蔵野赤十字病院 武蔵野市境南町1-26-1
相談専用ダイヤル 0422-32-3135

どちらの施設も“肝疾患相談センター”を開設しています。
受付時間 月曜日から金曜日 9:30~16:00 (年末年始を除く)
相談内容 肝疾患に関する治療や医療費助成など
相談方法 電話または面談

山梨の患者さんは、

山梨大学医学部付属病院 第一内科 中央市下河東1110
受付時間 月曜日から金曜日 10:00~16:00 (年末年始を除く)
相談内容 肝疾患に関する治療や医療費助成など
相談方法 電話または面談(電話予約後)

以上です。

当院は肝疾患診療連携拠点病院ではありませんが、外来では“健康よろず相談所”を目指しています。何なりと心配事がありましたらご相談下さいね。
また各種助成に関しましては、医療連携・医療相談室で、いつでも相談できます。窓口は正面玄関入ってすぐ右手にあります。お気軽にご活用下さい。


2011年5月30日月曜日

第40回日本IVR学会に参加して


5月19日木曜日

今日から3日間、青森で日本IVR学会総会が開催されます。IVRというのはインターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略です。IVR学会のホームページに解説がありますので引用しておきますね。


IVRは、日本語訳として一般的に「放射線診断技術の治療的応用」という言葉が用いられますが、「血管内治療」、「血管内手術」、「低侵襲治療」、「画像支援治療」もほぼ同義語として使われています。エックス線透視や超音波像、CTを見ながら体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気を治す新しい治療法です。


 IVRは手術を必要としないため、身体にあたえる負担が少なく、病気の場所だけを正確に治療でき、入院期間も短縮できるなど優れた特徴を持っています。高齢者や状態の悪い進行ガンをふくめたガンの治療に広く応用され、その他に緊急状態(大出血)からの救命や、血管などの閉塞あるいは動脈瘤に対する治療にも有効な治療方法です。


以上ホームページから引用


 僕たちが日常行っているRFA(ラジオ波焼灼術)やTAE(肝動脈塞栓術)さらに動注カテーテルの埋設などの治療は、全てIVRに属します。


 IVRはまさに技術そのものなので、上手い下手があります。肝臓の領域では、日本が技術を開発・改良して世界をリードしています。日本IVR学会は、技術の標準化とスキルアップさらに新しい技術の開発について全国からエキスパートが集まる勉強会です。






 記念すべき第40回会長は、鳴海病院の淀野啓先生です。この学会の総会に参加するため、青森にやってきました。

早朝、恒例の学会ジョギングです。今回は青函連絡船の遺構を巡ります。
津軽海峡を渡ってきた爽やかな潮風に包まれ、生命に活力を注ぐ春の朝日を全身に浴びて、疾走(実際は早歩きのスピードです)します。

朝日が津軽海峡を照らします

写真左手が青森駅、係留されている連絡船は八甲田丸です。

この桟橋に残るレールは北海道に繋がっていました。
つばめマーク付のC62 2もこの桟橋から青函連絡船にのって北の大地に渡ったと思います
(鉄ちゃんでないとわかんないよね)。

 レールのように錆びついた筋肉と、古い脂がこびりついた循環系を、久しぶりに磨きながら、ホテルにもどりました。


 シャワーを浴びて学会に出陣です。

19日午前中は、技術教育セミナー BRTOの実際、ランチョンセミナー は、工藤正俊先生の”肝細胞癌治療におけるsorafenibの位置付け,その適正使用ならびに今後の展望” そして午後は、シンポジウム2 IVR達人への道⑴ 肝癌治療のIVR と 技術教育セミナー デンバーシャント に参加しました。

IVR学会の素晴らしいところは、技術教育セミナーにあります。その道の達人が3-4人登場して「うちではこうやっている、ちょっとしたコツはここです」のようなプレゼンテーションを行い、その後会場前に設置されたデモストレーションで実際に達人から教えてもらうことが出来ます。達人たちも技術の普及と標準化のために一生懸命教えてくれます。また企業も高価なデバイス(針やカテーテルなど)を提供してサポートしてくれます。

数ある学会の中で、これほど技術教育が成されている会は、他にありません。


教育セミナー 実際に医療器具を触って感触を確かめます。達人より直接指導してもらえます。

自分の医療技術を検証し、謙虚に学ぶ絶好の機会に恵まれました。名残惜しいのですが、20日金曜日は、本業のカテーテル手術と病棟回診、外来がありますので夕方の新幹線に飛び乗り一次帰京。

20日金曜日は、佐藤新平先生に骨セメントの教育セミナーに参加してもらいました。これから超高齢化社会を迎えるため、科の枠を超えてとても重要な手技と思われます。”穿刺の技術が人々の暮らしを守る”これが目標ですね。

21日土曜日早朝(午前6時から・・・主治医の影響で患者さんは早起きになります。)に回診後、再度青森に。

IVR学会のもう一つの素晴らしいところは、技術ですから当然、全例で上手くいくわけではありません。一生懸命やっても条件が悪い患者さんに行うと時に上手くいかない場合もあります。失敗学という学問があるように、上手く行かなかった場合、どのように対処すれば良いのか?患者さんを救う、そのためにお互いに知恵を出し合い討論します。午後には市民公開講座と淀野啓先生の講演 ”鳴海病院の奇跡の軌跡”がありました。青森でも、民間病院でも、最高のIVR医療が受けられるように努力している淀野先生の姿がありました。


八甲田山の残雪と新緑です。雪で冷やされた空気が霧状になり、幻想的な風景となっています。

2011年5月23日月曜日

教育が組織を変える

5月18日水曜日

山梨県立中央病院の1階売店横の壁に、今年度新入職した看護師さんを紹介する掲示があります。


水の中を悠々と泳ぐ魚ですが、よく見ると小魚が集まって一つの大きな魚ができています。内側のピンクの小魚が新入看護師です。各自の抱負が書き込まれています。(技術や知識、努力、笑顔などの単語が目立ちます)。そのかわいい小魚ちゃん達を囲む黄色の魚が先輩達です。それぞれの立場で一言コメントが書いてあります。新入職員を先輩が優しく時に厳しく見守っています。

お魚の口の辺りに見慣れた書体がありました。新入職員の心に響く一言と思います。やっぱり組織を育てることは人を育てること。働くスタッフが立派に成長すれば結果として組織も成長します。小さな努力や教育も、積み重ねることによって、きっと、素晴らしい結果に繋がると思います。


教育の大切さを痛感して帰京しました。ちょうど今日の午後は、東京大学医学部5年生の学生さんに対する病院実習(教育)を当院が担当することになっていました。

大学病院には無い、当院ならではの治療現場(無痛ラジオ波、進行肝癌の化学療法、緩和医療)を見学してもらいながら、学生として何を学ぶべきか、少しでも将来の参考になるよう指導しました。将来、日本の医療を背負って立つ学生さん達に満足して帰ってもらうため努力しました。
学生実習も終わり、診療もひと段落つきました。

17時56分 はやて139号で、IVR学会が開催される青森に向かって出発です。


東北新幹線(はやて号)に貼られてある、東北エールのステッカーです。

道中、僕も右側(東側)にむかって「僕も頑張るから、皆もね」って、エールを送ることにしました。
さあ、お弁当も買ったし、新青森に向けて出発です。

新しい仲間

4月1日 平成23年度の始まりです。

皆様 こんにちは。
肝臓内科・消化器内科トピックスを開いていただき、ありがとうございます。

お気づきかもしれませんが、投稿(執筆日)日と文頭の日付(本来の日)が合っていません。気分の乗った時しか書けませんので、時空が前後します。溜まった内容を回想して書いたりしたのが原因です。よろしくお付き合い下さいね。

さて、新年度を迎え当科も新しくなりました。
今年度はスタッフが充実します。肝臓のみならず消化管疾患(胃や腸)、胆膵疾患に専門医を招聘しました。従来にも増して良い医療(きれいに治す・早く治す・安く治す・安心を添える)が展開できると思います。スタッフ一同頑張りますので宜しくお願い申し上げます。

スタッフ紹介

河井敏宏先生 2010年10月赴任 

佐藤新平先生が帝京大学溝の口病院に勤務していた時に知り合い、肝腫瘍のラジオ波焼灼術を極めるため(佐藤新平先生の「俺の右腕にならないか」と誘われ)当院に赴任してくれました。
前職の自衛隊中央病院時代は航空自衛隊に属し大尉だったそうです。持ち前の体力と勉強熱心な真面目さがウリです。当直でもオールバックで決めて頑張っています。

杉本貴史先生 2011年4月赴任

内視鏡部の充実を図るため、東京大学消化器内科のお力添えを頂き、当院に赴任してくれました。
大学では内視鏡治療専門医として、早期胃がんや大腸がんの内視鏡的治療を行ってきました。その経験を生かし低侵襲のがん治療を展開中です。確かな技術と関西育ちのユーモアを添えて診療にあたってくれると思います。

梶山祐介先生 2011年4月赴任

河井敏宏先生と同じく、佐藤新平先生が帝京大学溝の口病院に勤務していた時に知り合いました。
帝京大学大学院を卒業して、肝がん治療の研鑽を積むため1年間の予定で赴任してくれました。もの静かで実直な性格の持ち主です。何事にも一生懸命取り組んでくれますので、早くも患者さんやスタッフからの信頼を得ています。

6月からは、さらに日赤医療センターより八島陽子先生が胆膵疾患(胆のうや膵臓の病気)の診療を立ち上げるため赴任してくれる予定です。

これからもスタッフ一同、医療の向上のため努力します。よろしくお願いします。



杏雲堂病院創始者 佐々木東洋先生銅像の前で

左より 河井先生、杉本先生、佐藤隆久先生、小尾、佐藤新平先生、梶山先生です。

2011年5月18日水曜日

ObamaとOsama, そしてJUSTICE

5月2日 Obama announces the death of Osama bin Laden by CNN

Dear President Barack Hussein Obama, Jr.,

オバマ大統領の記者会見で"Justice has been done"と仰っていました。
残念なことにまた殺し合いです。確かにテロを企て実行したことは卑劣で残念な行為です。当然、テロで無念にも亡くなった方々、そして愛する人々を失ったご家族の気持ちは計り知れません。

しかし問答無用(裁判なし)で射殺する(そして祝福する)のは許されるのでしょうか?

本当にJusticeなんでしょうか?
本当にTerrorismは根絶するのでしょうか?

テロ自体は憎むべき行為ですが、なぜ実行に至ったのか、回避することは出来なかったのか?
次の悲劇を生まないために、必要な検証だと思います。正論が通用しない相手かもしれません。
しかし諦めず忍耐強く立ち向かう必要があると思います。

いつの時代も正論は誰もが理解していながら悲劇は繰り返されます。

もう戦いは終わりにしましょう。憎しみが憎しみを呼ぶ戦いはもうやめまししょう。病気も克服できない、自然災害も克服できない私達です。せめて人が人を殺すなんて、理由がどうであれもうやめましょう。

MAHATMA GANDHI teaches me that truth can never be propagated by doing violence. Those who believe in the justice of their cause have need to possess boundless patience. 


Yours sincerely,

2011年5月17日火曜日

第97回日本消化器病学会総会


5月13日金曜日から15日日曜日にかけて、第97回日本消化器病学会総会が新宿の京王プラザホテルで開催されました。当科からは、私(小尾)が1題と佐藤新平先生が2題の発表です。

13日金曜日、朝の回診をしてから出陣です。学会が東京で開催されると城(病院)が守れるので安心です。

一生懸命作ったスライドを、PCセンターで登録して準備完了です。午前中は、肝癌のミニシンポジウムに参加しました。ソラフェニブやミリプラチンの臨床成績が報告されました。この2剤は最近臨床現場に登場したので話題性があります。各施設の生のデータを聞き、自分の考えを整理できる絶好の機会でした。

午後は、いよいよ私の出番です。パネルディスカッション7「進行肝細胞がんの治療選択」というセッションです。全国から選ばれた15施設より、進行肝細胞がんに対する化学療法や放射線治療の基礎研究から臨床試験データまで広く討論することが出来ました。大阪大学の和田浩志先生からはIFN併用5FU動注化学療法の効果予測因子としてIFNR2に加え、EpCAM, IGFBP7, miR-21の発現が関与していること、また金沢大学の山下竜也先生からサイトカインのIL4底値が奏効に関与していると報告されました。私どもはソラフェニブ60例の解析から減量投与量開始の有効性と安全性、さらに動注化学療法との比較データを発表し、門脈腫瘍浸潤症例における治療閃絡について議論してきました。新しい知見を共有し、一歩一歩医学が発展することを実感できる楽しみがありました。

夕方、私達に加え日赤医療センターの吉田英雄先生と懇親会を行いました。お隣のNSビル最上階の居酒屋さん”浪速ろばた八角”で、抜群の見晴らしのなか明るいうちからキンキンに冷えたビールで喉を潤しました。

14日土曜日は、佐藤新平先生の出番で、私は病棟を守りました。佐藤先生は、進行肝細胞癌患者における胃食道静脈瘤破裂75例の検討というタイトルで発表しました。門脈腫瘍浸潤症例では門脈圧が上昇して静脈瘤破裂を来すリスクが高いです。今後どうすべきか、議論されました。同じセッションでは同僚の谷口博順先生(現 日赤医療センター)と大木隆正先生(現 三井記念病院)が発表しました。

午後病棟が落ち着いたので、石井裕正先生追悼記念講演”酒と水と命”を聞きに行きました。
東大病院に在籍していたころ、御茶ノ水消化器病研究会という会がありました。御茶ノ水界隈の大学があるテーマに従い、症例発表して切磋琢磨することを目的とした会です。臨床能力、発表能力を各大学の教授が評価し順位が決まるという厳しくも(今振り返ると)非常に役立った会でした。
その時お世話になったのが慶応大学教授故石井先生であり追悼公演演者の順天堂大学教授佐藤信紘先生でした。
講演はアルコール肝炎研究の歴史が良くわかる内容でした。特に興味深かったのはミトコンドリアです。ミトコンドリアは生命のエネルギーを作り出している細胞器官です。ミトコンドリアをいかに元気で長持ちさせるか?僕も考えたいと思いました。

15日日曜日 爽やかな五月晴れの朝を迎えました。西新宿も日曜の早朝は、静かです。街路樹の新緑と清々しい空気に包まれます。

会場に向かう途中にあったPRONTOでモーニングを頂き、休日の朝を満喫しました。

午前中はワークショップ12 非代償性肝硬変の合併症とその対策というセッションに参加しました。山梨大学の進藤邦明先生がChild-Pugh Score別の予後とその規定因子を発表しました。Child Cでも10-11点では、思ったより予後が良いこととやっぱり腎機能が予後を規定することが再認識されました。
さらにPSE 腹水濾過濃縮再静注、デンバーシャント、TIPSが報告されました。これらの手技は、賛否両論なので誰にどのようなタイミングで行うべきなのか?どうすれば合併症を防げてうまくいくのか?検討が必要だと思いました。

昼は、クローン病(炎症性腸疾患)のランチョンセミナーに参加しました。演者は同じ釜の飯を食べた加藤順先生(現 和歌山県立医大消化器内科 准教授)です。クローン病治療の現在における問題点をわかりやすい論旨とスライドに、関西弁のスパイスを添えて講演してくれました。

午後は佐藤新平先生の2題目、切除不能進行胆管細胞癌に対する動注化学療法の発表がありました。現在はジェムザール、TS-1が第一選択薬として用いられていますが、これらの薬が登場以前から行った症例や第一選択薬が効かなかった症例に使った成績を出しました。

春と秋は学会シーズンです。学会はいろいろな先生にお会いできて議論できる貴重な機会です。今後も有効に利用したいと思いました。