2010年2月9日火曜日

腫瘍マーカーとダブリングタイム

2月3日水曜日 腫瘍のダブリングタイム(Doubling time) について

 肝がんの腫瘍マーカー(癌があると上昇する血液検査の項目 何癌かによって異なる)は、AFP(エーエフピー)、AFP-L3 (エルサン)、PIVKA-II(ピブカ)の3種類があります。エルサン腫瘍の悪性度を示すマーカーですから、ここでは エーエフピーとピブカに限ってお話します。

 腫瘍マーカーは一般に腫瘍の量を定量的に反映出来るので、腫瘍マーカーの推移を診ることによって、スクリーニング(がんの発見)や治療効果を判定するのに役立つわけです。ダブリングタイム(Doubling Time)とは、腫瘍マーカーが文字通り二倍になる時間のことです。例えば1月3日にAFP=100であったのが2月3日にAFP=200となったと仮定します。この場合AFPのダブリングタイムは31日になります。ダブリングタイムが短ければ、それだけ腫瘍の成長が早いということなので悪性度が高いということになります。一方、長ければ腫瘍の成長は遅いということなので悪性度が低い(いずれにしても悪性なのですが程度が高い、低いという話です)ということになります。

 一般的に腫瘍は上の図に示したように球体です。球の体積は、3/4πr3(乗)つまり3/4x円周率x半径x半径x半径で求められます。半径が2cmの球体の体積は4.2立方センチメートル、半径が倍の4cmでは、33.5立方センチメートル、半径が更に倍の8cmでは268立方センチメートルとなります。お気付きのように半径が倍になると球体の体積は約8倍になってしまうのです。特にラジオ波焼灼療法など局所療法の治療効果は、腫瘍サイズに大きく依存してしまうのです。一般にラジオ波焼灼療法の局所再発率は、直径2cmと3cmで大きな差があるのですが、体積で比較すると4.2立方センチメートル対14.1立方センチメートルです。直径1cmの差が体積では7倍になってしまうのです。

 話が逸れましたが、化学療法によって如何にダブリングタイムを長くできるか、ガンの成長を遅く出来るかが私どもの命題です。

第16回肝血流動態イメージ研究会に参加して

1月30日土曜日 31日日曜日 第16回肝血流動態イメージ研究会が、神戸ポートピアホテルで開催されました。

 肝臓がんはウイルス肝炎を背景に発生するため、誰が癌になるのかある程度予測できます。また肝臓内に次々に発生するため、発ガンの過程を画像で捉えることが出来ます。この発ガンの過程を、病理(腫瘍の一部をとって顕微鏡で診る)や分子生物学(遺伝子や細胞内の指令がどうなっているか)そして画像(超音波・CT・MRI・血管造影検査)で血流(動脈・門脈・静脈)がどのように変化するか、どのように関連しているのか探求する研究会です。発ガンのプロセスをこのように見ることが出来る癌腫は他にはありません。研究が進み予防や治療に貢献するのも現実となっています。

 今年はEOBプリモビスト造影MRIが演題の約半数を占めていました。新たなMRI造影剤としてEOBプリモビストが登場しました。

 肝腫瘍の画像診断法として大きく分けて3種類ありあす。①超音波検査②ダイナミックCT・MRI ③SPIO-MRIです。②のダイナミック検査とは、ヨードやガドリニウムという造影剤を急速に注射することによって造影剤が肝動脈にあるタイミングで撮影する動脈相と造影剤が門脈にある門脈相そして造影剤が肝実質にある平衡相と3回撮影します。特に肝細胞癌は腫瘍内の血管が豊富な腫瘍ですから動脈相で腫瘍は良く染まり(画像上白く見えます)、平衡相では腫瘍は周囲肝実質と比較して抜けて(画像上黒く)見えます。このコントラストを用いて診断しているのがダイナミック検査です。③のSPIO-MRIは、酸化鉄(磁性)を造影剤とした検査です。酸化鉄は正常肝に存在するクッパー細胞に取り込まれますが、癌にはクッパー細胞が存在しないため酸化鉄は取り込まれない。このコントラストを用いて診断しているのがSPIO-MRIです。

 EOB-プリモビスト造影剤は、②のダイナミック検査に用いるガドリニウムという造影剤にエトキシベンジル基(EthOxyBenzyl=EOB)を導入して肝細胞への特異性を上げることによって正常肝細胞に取り込まれる性質を持たせた画期的な造影剤です。つまり②と③が同時にできるのです。③で抜ける、つまり癌の疑いがありで②で染まらない、つまり明らかな癌とは言えない、この状態の腫瘍が発ガン過程のどこに当たるのか?どのように経過を追えばよいのか?治療はどうするのか?議論になった訳です。やはり肝臓は奥が深くて興味深いです。今後の発展が楽しみです。

 会場のポートピアホテルから三ノ宮まで、ジョギングしました。写真は神戸市役所横の花時計です。関西に来ると日の出が遅く西に来たことを実感します。

2010年2月8日月曜日

第487回甲府市内科医会に参加して

1月26日火曜日 第487回甲府市内科医会が甲府古名屋ホテルにて開催されました。


 今回座長は山梨県特別顧問の小俣政男先生、演者は山梨県立中央病院消化器内科の小嶋裕一郎先生と望月仁先生でした。
 小嶋先生は「消化管腫瘍の内視鏡的治療の取り組み」というタイトルで、中央病院における内視鏡的粘膜下層剥離術をまとめられ発表しました。術者ならではのコツを随所に挿み臨場感がありました。
 望月先生は、「肝胆膵疾患への新たな試み」というタイトルで講演されました。望月先生は、県立中央病院消化器内科の肝胆膵がんを一手に引き受けられています。特に胆管がんや膵臓がんで閉塞性黄疸(胆管が癌で狭窄もしくは閉塞してしまい黄疸が出る)を来たした患者さんの処置が見事です。高齢の患者さんでも安全に日常生活の質を落とさないように治療されています。
 たとえ地方でもその道に精通した先生がいらっしゃるのは、患者さんにとって心強いです。座長の小俣先生が仰っていましたが、忙しい中でも自身の仕事をまとめて評価する謙虚な姿勢が大切で、結果として医療の質が向上し患者さんの役に立てるわけです。私どももお教えを肝に銘じて頑張りたいと思いました。

スタッフ送別会

1月19日火曜日 6階病棟の看護師 加藤さんと石井さんの送別会がありました。

 二人とも優しい人柄で、これまで病棟を支えて頂きました。加藤さんはシッカリ者で曖昧な事が嫌いです。病棟が弛まないように気遣いしてくれました。石井さんは精神医学に興味があり、進行がん患者さんの心のケアに人一倍気遣ってくれました。二人とも新天地に行っても当科で得た経験を生かして大きく羽ばたいて欲しいと思いました。

 今回は病棟スタッフのリクエストで「人形町今半」有楽町店で送別会を行いました。昨今はデフレで飲み放題・食べ放題が多いですが、たまには美味しいものを少し頂くような大人の宴も良いんじゃない、という判断で決まりました。

 写真はお店のホームページから拝借したイメージです。美味しかったですよ!


香川大学医科学懇話会で講演

1月18日月曜日 香川大学医科学懇話会で講演させて頂きました。
 香川大学消化器・神経内科学教室の正木勉先生は、東京大学消化器内科で一緒に研鑽させて頂いた関係で講演の機会を与えて頂きました。大学病院の若い先生方が対象でしたので、当科での進行がんの治療成績を臨床研究の大切さを織り交ぜて発表しました。

 高松は瀬戸大橋が出来る前、宇高連絡船の発着場で四国の玄関口でした。その跡地はきれいに整備されサンポートという公園と玉藻防波堤となっています。写真は防波堤の先端にある世界初の総ガラス張り灯台です。キラキラ輝く瀬戸内海を渡る潮風を全身に感じながらジョギングしました。まさに命の洗濯です。金比羅さんにも参拝し、全ての人が元気で幸せに長生きできるようにお祈りしました。
 最後になりましたが、懇話会の正木教授をはじめ懇話会に関係された皆様に感謝申し上げます。