2011年8月7日日曜日

絶滅危惧種と三ツ星

8月7日 日曜日

昨日、大阪にてネクサバール発売二周年記念講演会が開催され、パネリストの一人として参加しました。

ネクサバール(=Sorafenib)は、肝細胞癌に適応のある唯一の分子標的薬です。癌細胞の増殖やがん細胞を養う栄養血管の成長を支配する指示系統を遮断してくれる薬です。いわばリレーのバトンを渡せないように邪魔をする、癌細胞にとってはかなり嫌な奴です。

ネクサバールが日本の医療現場に登場して、二年が経過し一万人を超す患者さんに処方されたそうです。使い方、特に副作用対策など医療者側もだいぶ手馴れてマネージメントできるようになってきました。次のステップは、どのような状態の肝がんに使えばもっとも有効なのか?今回の議論の的でした。

肝がんが転移した場合は、肝機能が許せば文句なくソラフェニブですが、さらに転移のない状態で使えばもっと良いのか?特に繰り返しTAE(肝動脈塞栓術)やHAI(動注化学療法)を行っている集団が、ネクサバールの前倒し使用のターゲットとなっているわけです。

どの時点で既存の治療からネクサバールに切り替えるのか?ちょっと業者主導の感は否めませんが、灼熱大阪の外気に負けない熱い討論がなされました。本当は、学会のパネルディスカッションで討論すれば、もっと本音でフェアな討論が出来ると思います。近頃の学会はパネリストが多すぎでパネル提示のみでディスカッションがないのが現状です。フロアの先生方も大人しく(ネット世代のためか)匿名化しないと何も言えないようです(ちょっとグッチになっちゃった)。何はともあれ、ある程度時間を使って討論が出来たこと、結果として何となくコンセンサスが得られたことが収穫でした。

僕は絶滅危惧種である動注化学療法を代表してパネル発表しました。動注化学療法はその手技とメンテナンスが煩雑なうえ、標準化されていないため、海外では全く認知されていない(真似できない)治療法です。もちろん日本でも限られた施設の限られた医者がやっているのが現状です。標準化されていないということは種の保存、繁栄を怠っているので絶滅危惧種になるわけですね。でも逆を言えば、バイトのお兄ちゃんでも一定の味が出せるファミリーレストランを目標とするか、熟練した職人技で三ツ星を狙うか、動注屋は後者のイメージが強い集団です。その動注化学療法がはるかに簡便な内服薬であるネクサバールのターゲットになるのも道理です。でもどっちが本当に患者さんにとって良いのか検証する必要があります。現在比較臨床試験を行っています。どっちが美味しいか?近い将来患者さんが決めてくれます。



講演会終了後、阪大外科の永野先生、香川県立の高口先生達と大阪丸ビル地下のたこ焼き屋さんに行きました。ここは自分でたこ焼きを焼くことが出来ます。さすがは地元大阪出身の永野先生は鮮やかな手つきでたこ焼きを焼きます。コツはどうやら待ち、と押し込み、そして回転のようです。子供のころから家庭で焼くそうです。僕らは危うくもんじゃ焼きになりそうでした。レモンサワーの清涼感とともに夏の暑い夜は更けていきました。

ブログの更新を怠っていたことからもお解りになるように、ちょっと忙しかった・・です。暑さや忙しさを理由にサボっていたいたジョグ、今朝は行きましたよ!大阪駅前から御堂筋を難波まで往復、名付けて夏の大阪満喫コース。昨日のレモンサワーが出てきたのか?爽やかなレモンの香りのような汗をいっぱいかいて・・・。

新幹線で東京に戻っています。