1月16日土曜日 第1回日本肝がん分子標的治療研究会が、神戸市ポートピアホテルにて開催されました。
まず分子標的薬とはどのような薬なんでしょうか?
従来の抗がん剤のジレンマは、ガンを抑えると同時に正常な細胞にも影響を及ぼしてしまうことです。ところが分子標的薬は、ガンの進行に影響を与える特定の分子だけに作用するので、理論的には大変都合の良い薬です。ネクサバールは、腫瘍細胞を増殖させる細胞内の経路(指令)を中断させたり、腫瘍を養う新生血管の成長を邪魔することによってガンの成長を抑えるお薬です。
わかりやすく例えると、正常細胞と癌細胞を作っている工場があるとします。ネクサバールは、「がん細胞を作りなさい」という工場長の指示を伝達の過程で止めてしまいます。さらに癌細胞を作っている生産ラインの電源を止めてしまい癌細胞を作れなくしてしまうのです。
理論的には非常に良いのですが、人体の細胞は非常に複雑な機能を持っています。昔、NHKの番組でもあったように”小宇宙”なんです。ですから予期しないことも起こる訳で、その代表が手足皮膚反応という副作用なのです。これは手のひら(特に指)や足のひらの硬いところ(角質)が痛くなったり腫れたりただれたりする副作用です。他に高血圧や下痢、倦怠感などがみられます。
薬は全て”両刃の剣”ですから、今回の研究会は参加者にとって有意義な会となるわけで結果として患者さんの役に立つわけです。
当科からは29例の使用経験を発表させて頂きました。治療効果のスライドを提示します。例え遠隔転移があるような進行肝がんでも腫瘍の進展が抑えられます。肝機能が良いことが使用の絶対条件で、上手に副作用をコントロールして長く服用するのがコツだと思います。
いずれにしても肝がん治療に新しい兵器が加わったことは事実です。上手に使って更に患者さんが元気で長生きできるように期待します。
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