8月7日土曜日
講演会の続き
今回は、山梨帝京医会で、一緒に講演させていただいた池田眞人先生を紹介します。池田先生は、社会保険山梨病院の内分泌科(体のホルモンにかかわる病気)の名物先生です。どういう点が名物かというと、糖尿病の患者さん達の間では、食事指導や生活指導が厳しい(患者さんのことを思えば当たり前だと思うんですが)ことで有名なんです。
「いつの間にか引き込まれちゃうのよね、池田先生に。」と患者さんが言っていました。ですから前からお会いしたいと思っていました。今回たまたま講演でご一緒させていただき願いが叶ったわけです。
先生は“糖尿病2010”というタイトルで講演されました。糖尿病の診断基準の改定や新たにDPP-4阻害剤という薬が登場したことによる治療戦略について教えていただきました。ただHbA1cを下げるのではなく血糖の日内変動をいかに抑えるか、しかも安いお薬で。先生の臨床医としての努力が垣間見ることのできる内容でした。
講演会後の懇親会で席が隣でした。池田先生はスリムです。どのようにして体型を維持されているのか、食事を注意(ダイエット)されているのか、運動をなさっているのか、お聞きしました。そしたら「好きな物をお腹いっぱい食べています」という予想もしないお返事。えぇ?と思って二の句が告げられないでいると「食べ方が違うんですよ」と仰いました。
「ほらっ先生(私)のその食べ方、食べ物に少し歯型を付けて飲み込んでいますよね。それオットセイ食いっていうんですよ。それじゃ、食べ物の本当の味は解らない。例えば、お米の味は解らないでしょ?その食べ方だと満腹感が得られないからいくらでも食べちゃうんですよ」と。
やられたっ!しかも例えが上手い。お米はデンプン、唾液中のアミラーゼが分解して糖になり甘みが出るはず。確かにあまり噛まずに流し込んでいたので切り返せない。しかも“食べ物の本当の味を知らない”と言われちゃったもんね、45歳にもなってから。
どんどん池田先生のペースにはまっていきます。これかあ、患者さんが蟻地獄にはまっていくと言っていたのは。「ど、どうすれば良いのでしょうか?是非教えてください」と、もう池田先生の思う壺です。
「まず、食べ物は30回噛んで無くなるように食べてください」
「はいっ」
「あー、ダメダメ先生、そんなに口の中に入れちゃ。30回噛んでも無くならない。口の中に残っちゃうでしょ」 「モグモグ」
「いいですか、一回に口の中に入れて良いのは、小指の先の量ですよ。それを30回噛んで食べるんです。」
「えーっ、これだけですか?」
「はい、それだけです。これ以上だと30回で噛み下せません。」
「いただきます」
「どうです?30回で無くなりましたか?お米の味が変わりましたか?」
「はい、本当ですね」
「この食べ方で食べると少量の食事でも十分満足、満腹になるんです。皆食べすぎなんですよ、本当は。」
この日は、和洋折衷のコース料理でした。僕たちは30回噛んで、料理を味わって食べているのでどんどんお料理が並んでいきます。他の先生たちのお皿はどんどん空いていくのに(医者はいつ呼ばれるか解らないので基本的に早食いです)。
「いいですか、例えばこのステーキ美味しそうですよね、ステーキまでたどり着きたいから、途中でお腹がいっぱいにならないように残すんです。」
確かに。この食べ方で食べると料理を十分味わうことが出来るし、何ていってもお腹がいっぱいになっちゃいます。いつもなら、次のお皿が来るのを待つペースで完食(全部食べるという業界用語)していたのがウソみたいです。コース途中で、お腹がいっぱいになってきました。残った料理は、もったいないですが仕方ありません。
「食べ方でこんなに違うんですね、驚きました」
「はい、解って頂けて良かったです」と池田先生ニッコリ。
翌日、日曜日に家族でお蕎麦屋さんに行きました。いつも大もり(もりそばの大)を頼むので、今回も何も考えず大もりを頼みました。いつもは大もりでもあっという間に無くなってしまい少し物足りないのですが、今回は違います。何たって池田式を実践したからです。ソバもパンも同様すべてに当てはまる食べ方であることは、昨日確認済みです。
「いいですか、30回噛んで無くなる量ですよ」池田先生の声が聞こえてきます。
ソバの麺は1回に3-4本です。いつもの十分の一ですね。そば粉の味まで味わうように食べました。すると半分も食べると満腹です。なるほど、食べ方でこうも違うのかと再認識しました。唯一の問題は、食事に時間がかかるようになったことです。ゆっくり、食事に時間をかけられない気忙しい生活が、一番の問題かも。
皆さんも試してみてくださいね。
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