2010年2月9日火曜日

第16回肝血流動態イメージ研究会に参加して

1月30日土曜日 31日日曜日 第16回肝血流動態イメージ研究会が、神戸ポートピアホテルで開催されました。

 肝臓がんはウイルス肝炎を背景に発生するため、誰が癌になるのかある程度予測できます。また肝臓内に次々に発生するため、発ガンの過程を画像で捉えることが出来ます。この発ガンの過程を、病理(腫瘍の一部をとって顕微鏡で診る)や分子生物学(遺伝子や細胞内の指令がどうなっているか)そして画像(超音波・CT・MRI・血管造影検査)で血流(動脈・門脈・静脈)がどのように変化するか、どのように関連しているのか探求する研究会です。発ガンのプロセスをこのように見ることが出来る癌腫は他にはありません。研究が進み予防や治療に貢献するのも現実となっています。

 今年はEOBプリモビスト造影MRIが演題の約半数を占めていました。新たなMRI造影剤としてEOBプリモビストが登場しました。

 肝腫瘍の画像診断法として大きく分けて3種類ありあす。①超音波検査②ダイナミックCT・MRI ③SPIO-MRIです。②のダイナミック検査とは、ヨードやガドリニウムという造影剤を急速に注射することによって造影剤が肝動脈にあるタイミングで撮影する動脈相と造影剤が門脈にある門脈相そして造影剤が肝実質にある平衡相と3回撮影します。特に肝細胞癌は腫瘍内の血管が豊富な腫瘍ですから動脈相で腫瘍は良く染まり(画像上白く見えます)、平衡相では腫瘍は周囲肝実質と比較して抜けて(画像上黒く)見えます。このコントラストを用いて診断しているのがダイナミック検査です。③のSPIO-MRIは、酸化鉄(磁性)を造影剤とした検査です。酸化鉄は正常肝に存在するクッパー細胞に取り込まれますが、癌にはクッパー細胞が存在しないため酸化鉄は取り込まれない。このコントラストを用いて診断しているのがSPIO-MRIです。

 EOB-プリモビスト造影剤は、②のダイナミック検査に用いるガドリニウムという造影剤にエトキシベンジル基(EthOxyBenzyl=EOB)を導入して肝細胞への特異性を上げることによって正常肝細胞に取り込まれる性質を持たせた画期的な造影剤です。つまり②と③が同時にできるのです。③で抜ける、つまり癌の疑いがありで②で染まらない、つまり明らかな癌とは言えない、この状態の腫瘍が発ガン過程のどこに当たるのか?どのように経過を追えばよいのか?治療はどうするのか?議論になった訳です。やはり肝臓は奥が深くて興味深いです。今後の発展が楽しみです。

 会場のポートピアホテルから三ノ宮まで、ジョギングしました。写真は神戸市役所横の花時計です。関西に来ると日の出が遅く西に来たことを実感します。

0 件のコメント: