2011年5月30日月曜日

第40回日本IVR学会に参加して


5月19日木曜日

今日から3日間、青森で日本IVR学会総会が開催されます。IVRというのはインターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略です。IVR学会のホームページに解説がありますので引用しておきますね。


IVRは、日本語訳として一般的に「放射線診断技術の治療的応用」という言葉が用いられますが、「血管内治療」、「血管内手術」、「低侵襲治療」、「画像支援治療」もほぼ同義語として使われています。エックス線透視や超音波像、CTを見ながら体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気を治す新しい治療法です。


 IVRは手術を必要としないため、身体にあたえる負担が少なく、病気の場所だけを正確に治療でき、入院期間も短縮できるなど優れた特徴を持っています。高齢者や状態の悪い進行ガンをふくめたガンの治療に広く応用され、その他に緊急状態(大出血)からの救命や、血管などの閉塞あるいは動脈瘤に対する治療にも有効な治療方法です。


以上ホームページから引用


 僕たちが日常行っているRFA(ラジオ波焼灼術)やTAE(肝動脈塞栓術)さらに動注カテーテルの埋設などの治療は、全てIVRに属します。


 IVRはまさに技術そのものなので、上手い下手があります。肝臓の領域では、日本が技術を開発・改良して世界をリードしています。日本IVR学会は、技術の標準化とスキルアップさらに新しい技術の開発について全国からエキスパートが集まる勉強会です。






 記念すべき第40回会長は、鳴海病院の淀野啓先生です。この学会の総会に参加するため、青森にやってきました。

早朝、恒例の学会ジョギングです。今回は青函連絡船の遺構を巡ります。
津軽海峡を渡ってきた爽やかな潮風に包まれ、生命に活力を注ぐ春の朝日を全身に浴びて、疾走(実際は早歩きのスピードです)します。

朝日が津軽海峡を照らします

写真左手が青森駅、係留されている連絡船は八甲田丸です。

この桟橋に残るレールは北海道に繋がっていました。
つばめマーク付のC62 2もこの桟橋から青函連絡船にのって北の大地に渡ったと思います
(鉄ちゃんでないとわかんないよね)。

 レールのように錆びついた筋肉と、古い脂がこびりついた循環系を、久しぶりに磨きながら、ホテルにもどりました。


 シャワーを浴びて学会に出陣です。

19日午前中は、技術教育セミナー BRTOの実際、ランチョンセミナー は、工藤正俊先生の”肝細胞癌治療におけるsorafenibの位置付け,その適正使用ならびに今後の展望” そして午後は、シンポジウム2 IVR達人への道⑴ 肝癌治療のIVR と 技術教育セミナー デンバーシャント に参加しました。

IVR学会の素晴らしいところは、技術教育セミナーにあります。その道の達人が3-4人登場して「うちではこうやっている、ちょっとしたコツはここです」のようなプレゼンテーションを行い、その後会場前に設置されたデモストレーションで実際に達人から教えてもらうことが出来ます。達人たちも技術の普及と標準化のために一生懸命教えてくれます。また企業も高価なデバイス(針やカテーテルなど)を提供してサポートしてくれます。

数ある学会の中で、これほど技術教育が成されている会は、他にありません。


教育セミナー 実際に医療器具を触って感触を確かめます。達人より直接指導してもらえます。

自分の医療技術を検証し、謙虚に学ぶ絶好の機会に恵まれました。名残惜しいのですが、20日金曜日は、本業のカテーテル手術と病棟回診、外来がありますので夕方の新幹線に飛び乗り一次帰京。

20日金曜日は、佐藤新平先生に骨セメントの教育セミナーに参加してもらいました。これから超高齢化社会を迎えるため、科の枠を超えてとても重要な手技と思われます。”穿刺の技術が人々の暮らしを守る”これが目標ですね。

21日土曜日早朝(午前6時から・・・主治医の影響で患者さんは早起きになります。)に回診後、再度青森に。

IVR学会のもう一つの素晴らしいところは、技術ですから当然、全例で上手くいくわけではありません。一生懸命やっても条件が悪い患者さんに行うと時に上手くいかない場合もあります。失敗学という学問があるように、上手く行かなかった場合、どのように対処すれば良いのか?患者さんを救う、そのためにお互いに知恵を出し合い討論します。午後には市民公開講座と淀野啓先生の講演 ”鳴海病院の奇跡の軌跡”がありました。青森でも、民間病院でも、最高のIVR医療が受けられるように努力している淀野先生の姿がありました。


八甲田山の残雪と新緑です。雪で冷やされた空気が霧状になり、幻想的な風景となっています。

0 件のコメント: