2011年5月17日火曜日

第97回日本消化器病学会総会


5月13日金曜日から15日日曜日にかけて、第97回日本消化器病学会総会が新宿の京王プラザホテルで開催されました。当科からは、私(小尾)が1題と佐藤新平先生が2題の発表です。

13日金曜日、朝の回診をしてから出陣です。学会が東京で開催されると城(病院)が守れるので安心です。

一生懸命作ったスライドを、PCセンターで登録して準備完了です。午前中は、肝癌のミニシンポジウムに参加しました。ソラフェニブやミリプラチンの臨床成績が報告されました。この2剤は最近臨床現場に登場したので話題性があります。各施設の生のデータを聞き、自分の考えを整理できる絶好の機会でした。

午後は、いよいよ私の出番です。パネルディスカッション7「進行肝細胞がんの治療選択」というセッションです。全国から選ばれた15施設より、進行肝細胞がんに対する化学療法や放射線治療の基礎研究から臨床試験データまで広く討論することが出来ました。大阪大学の和田浩志先生からはIFN併用5FU動注化学療法の効果予測因子としてIFNR2に加え、EpCAM, IGFBP7, miR-21の発現が関与していること、また金沢大学の山下竜也先生からサイトカインのIL4底値が奏効に関与していると報告されました。私どもはソラフェニブ60例の解析から減量投与量開始の有効性と安全性、さらに動注化学療法との比較データを発表し、門脈腫瘍浸潤症例における治療閃絡について議論してきました。新しい知見を共有し、一歩一歩医学が発展することを実感できる楽しみがありました。

夕方、私達に加え日赤医療センターの吉田英雄先生と懇親会を行いました。お隣のNSビル最上階の居酒屋さん”浪速ろばた八角”で、抜群の見晴らしのなか明るいうちからキンキンに冷えたビールで喉を潤しました。

14日土曜日は、佐藤新平先生の出番で、私は病棟を守りました。佐藤先生は、進行肝細胞癌患者における胃食道静脈瘤破裂75例の検討というタイトルで発表しました。門脈腫瘍浸潤症例では門脈圧が上昇して静脈瘤破裂を来すリスクが高いです。今後どうすべきか、議論されました。同じセッションでは同僚の谷口博順先生(現 日赤医療センター)と大木隆正先生(現 三井記念病院)が発表しました。

午後病棟が落ち着いたので、石井裕正先生追悼記念講演”酒と水と命”を聞きに行きました。
東大病院に在籍していたころ、御茶ノ水消化器病研究会という会がありました。御茶ノ水界隈の大学があるテーマに従い、症例発表して切磋琢磨することを目的とした会です。臨床能力、発表能力を各大学の教授が評価し順位が決まるという厳しくも(今振り返ると)非常に役立った会でした。
その時お世話になったのが慶応大学教授故石井先生であり追悼公演演者の順天堂大学教授佐藤信紘先生でした。
講演はアルコール肝炎研究の歴史が良くわかる内容でした。特に興味深かったのはミトコンドリアです。ミトコンドリアは生命のエネルギーを作り出している細胞器官です。ミトコンドリアをいかに元気で長持ちさせるか?僕も考えたいと思いました。

15日日曜日 爽やかな五月晴れの朝を迎えました。西新宿も日曜の早朝は、静かです。街路樹の新緑と清々しい空気に包まれます。

会場に向かう途中にあったPRONTOでモーニングを頂き、休日の朝を満喫しました。

午前中はワークショップ12 非代償性肝硬変の合併症とその対策というセッションに参加しました。山梨大学の進藤邦明先生がChild-Pugh Score別の予後とその規定因子を発表しました。Child Cでも10-11点では、思ったより予後が良いこととやっぱり腎機能が予後を規定することが再認識されました。
さらにPSE 腹水濾過濃縮再静注、デンバーシャント、TIPSが報告されました。これらの手技は、賛否両論なので誰にどのようなタイミングで行うべきなのか?どうすれば合併症を防げてうまくいくのか?検討が必要だと思いました。

昼は、クローン病(炎症性腸疾患)のランチョンセミナーに参加しました。演者は同じ釜の飯を食べた加藤順先生(現 和歌山県立医大消化器内科 准教授)です。クローン病治療の現在における問題点をわかりやすい論旨とスライドに、関西弁のスパイスを添えて講演してくれました。

午後は佐藤新平先生の2題目、切除不能進行胆管細胞癌に対する動注化学療法の発表がありました。現在はジェムザール、TS-1が第一選択薬として用いられていますが、これらの薬が登場以前から行った症例や第一選択薬が効かなかった症例に使った成績を出しました。

春と秋は学会シーズンです。学会はいろいろな先生にお会いできて議論できる貴重な機会です。今後も有効に利用したいと思いました。

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