2012年2月10日金曜日

本当の資源 追記

みなさん こんにちは。

 今朝のNHK報道によりますと、日本海側などの大雪を受け、国土交通省は、道路の除雪費として合わせて100億円余りの交付金を各自治体に配分する方針を固めたそうです。よかったですね。


 本当の資源 その3でお話したように、豪雪地帯に降り積もった雪の恩恵を受けているので、支えあい が必要です。


 国と地方自治体が、いがみ合うのではなく、支えあう。中央政府と地方行政の役割分担を相談して、無駄な重なりをなくしていけば良いと思いますね。


 どこも同じ、上手く、わかってもらえるように説明 しないと、誤解されてしまいます。面白がって、ちゃちゃを入れる人も、ちゃっかり利用する人いますから、ねっ、橋下さん。


 さあ、今日の午後は帝京ちば医療センターで学生の講義です。 ”国試必勝 受験勉強法” を伝授してきます。 



2012年2月9日木曜日

学生教育 Spring Camp のお知らせ

みなさん、こんにちは。

 今日は、医学部学生実習 Spring Camp in Yamanashi の案内 です。

 医療は、 で成り立っています。ですから、人を育てる ということは、とても重要なテーマです。

 一昔前は、徒弟制度。先輩に煙たがられても、くっついて、全てをまねるところから始まりました。今は、教育カリキュラム が構築されています。またそのカリキュラムが公表され、学生が、どこで初期研修を行うか、自由に選べるシステムになっています。

 そこに競争原理が働き、カリキュラムは改善されていきます。当然、良いカリキュラムがある施設にはガッツのある学生が集まるという構図になりますね。

 以前、紹介した旭中央病院もその一例です。それこそ30年以上前から、屋根瓦方式の 重層教育 があり、地方の基幹病院であったため症例が豊富で、救急も全科みる。医者は全員、院内寄宿舎生活。房総半島のはずれ、田舎でも、全国から若いガッツのある医師が集まり研修していました。

 教える側も大変です。医学部では、教育方法は学びません。僕なりに、教えることが上手(=教えることが好き)という先生の技術を学びます。

その先生の口癖です。

「教えることは、わからなかった人に、わかって頂ける喜びなんだ」
「学生さんにわかって頂けるように、説明しなさい」
「学生さんがわからないのは、教え方が悪いんだ」

 自然体で教育するには、まだまだ未熟な僕です。自分が学生だったら、何をして欲しいか?

 人それぞれだと思いますが、教師(医学部の場合、医者)もいろいろなので、あまり気負わずやるしかないかな と思っています。

 3年前から帝京大学と東京大学、1年前から香川大学、今年から山梨大学。合わせて4校で非常勤講師を務めさせて頂きます。お互いに頑張りましょう。

 山梨県立中央病院には、優れた教育カリキュラム・重層教育・豊富な症例・寄宿舎があります。自分の将来は、自分の眼でみて決めたほうが良いと思います。興味にある学生さんは、是非、 Camp に参加してください。詳細はこちら

下の写真は、山梨中央病院における 学生実習の一コマです。病棟回診のあと、ヘリポート見学です。甲府盆地が一望です。ここに住む、住民の未来を担う若者達です。



2012年2月8日水曜日

本当の資源 その3 白いダイヤモンド

みなさん、こんにちは。

インフルエンザが猛威をふるっています。うがい手洗いを忘れずにね。加湿もね。

喉や鼻の粘膜から、ウイルスは侵入します。水道水(殺菌作用のある塩素が入っている)で、うがい、薬用石鹸での手洗いが、感染予防に重要です。

さらに、インフルエンザウイルスは、湿気に弱いウイルスです。グラフでもお解かりのように、加湿されると急速に死滅します。

昔、学校のダルマストーブといえば、大きなトタン製の盥(タライ)が載せてあって、お湯が沸いていました。僕達は給食の牛乳(当時は瓶)を、入れて温めたもんです。加湿と加温、一石二鳥。
もちろん少々の鼻水は、袖で拭い、僕は皆勤賞だったけどね。今は、どうなってるんだろうね。

ちょっと、脱線しちゃったけど、加湿は大事。濡れタオルを干すだけでも良いみたいですよ。

さて、水がらみで ようやく 白いダイヤモンド です。


前回、カドミウムがらみで、水の尊さ環境破壊の怖さについて、お話しました。

いかに水が尊いか、もう少しお付き合い下さいね。

人類は、動物 です。水なくしては生きられません。例えば四大文明は、どうだったでしょう?


 ナイル川流域でエジプト文明が、チグリス・ユーフラテス川流域でメソポタミア文明が、インダス川流域でインダス文明が、黄河流域で中国文明が、それぞれ栄えましたね。


 ”資源が無い日本” 聞いて久しいですよね。でも、これは産業革命以降の話。せいぜい、この150年から200年の話です。たかが化石燃料で、もう底をついています。


 つい先日、近隣の国が、レア・アース(希土類元素)の輸出で脅しをかけて来ましたよね。こんなもの着目されたのは、せいぜい、この50年です。

 水は、人類誕生から です。古代エジプト(紀元前3000年)からでも、5000年です。

 化石燃料が無くても希土類が無くても、生きていけます(江戸時代は鎖国してました)。でも、水がなかったら、人類は1日たりと生きていけません。

 いかに、水に恵まれているか 統計から見てみましょう。

Food and Agriculture Organization of United Nations の2010年版の資料から解析してみましたよ。

 
まず国別に、降水量(mm/年)をみてみました。

 世界平均807mm/年 ①インドネシア 2702mm/年 ②シンガポール ③フィリピン ④ブラジル ⑤ニュージーランド⑥日本 1718mm/年・・・・と続きます。

これ(降水量)を、各国の国土面積で割ってみましょう。単位面積当たりの降水量 じゃないと正確にわかりません。

 世界平均 0.0006mm/年/1000km2 ①シンガポール 3672mm/年/1000km2 ②スイス ③オランダ ④デンマーク ⑤アイルランド・・・・⑬日本 4.5mm/年/1000km2・・・・と続きます。

さらに、砂漠に降っても利用できないぞ、ということで、国土の森林率(保水作用)を、単位面積当たりの降水率に掛けてみました。

 世界平均0.0018 ①シンガポール 110.2 ②スイス 11.5 ③韓国 8.1 ④オーストリア 6.2 ⑤日本 2.1・・・と続きます。単位面積当たりの降水量が少なく、森林率(保水能力)が低いのはどこでしょう?・・・33位インド 0.08, 36位アメリカ 0.02, 39位中国 0.01, 42位イラク 0.009 となります。多くの人口を抱えた大国が、下位に来てしまいますね。

 日本では、少子高齢化が進んで、人口は減少傾向です。が、世界では、まだまだ人口は増え続けています。水や食料の不足は、直近の課題ですし、人類 生存に直結 する課題です。

 作物を作るにも、森林にも、もちろん人類にも 水は必要なのです。水こそ最大の資源 なんです。

 日本海側の山沿いでは、今も雪が深々と降り積もっていることでしょう。もちろん災害も起こし厄介な存在かもしれませんが、積もるということは水の貯蔵です。春にはゆっくり溶けて、土壌の保水能力を最大限に引き起こします。もし大雨であれば、せっかく降ってもアッという間に流れてしまいます。雪は、巨大なダムともいえるでしょう。

 生命の源、今後急流を生かしプチ水力発電エネルギー源となる可能性も秘めています。

豪雪は、白いダイヤモンド です。除雪の予算を使い切ってしまった・・・と、報道された市町村がありました。太平洋側もその恩恵を被るわけですから、できるサポートをするべきと思われます。


本当の資源はこれで終わりです。風邪ひかないように ねっ!

2012年2月6日月曜日

本当の資源 その2 中和??

みなさん、こんにちは。

前回の続きで、現在の中国、広西チワン族自治区の竜江河に戻ります。


竜江に中和剤が蒔かれています


 「当局は中和剤の投入によるカドミウムの凝固を行っています。」と、ニュースが流れていました。
『ん?カドミウムの中和?そんなこと出来るの?』って、思い、調べました。

 中和とは、酸と塩基が反応してそれぞれの性質を打ち消す反応のことです。では、カドミウムを中和剤で処理する方法の紹介です。

 河に大量に投げ込まれている 黄色い粉末 これは、ポリ塩化アルミニウム(酸性)です。そして次に投げ込まれるのが石灰(アルカリ)です。ポリ塩化アルミニウムを、石灰で中和することによって、水酸化アルミニウムの沈殿物ができます。

 この水酸化アルミニウムが出来る過程で、水中にある泥や金属(今回の場合カドミウム)が、取り込まれ、水酸化ナトリウムに包まれるようにして 沈殿 します。結果として、河の水(上澄み)は、きれいになるんです。

 なるほど・・・。中和反応を利用した、浄水方法だったんですね。ニュースもよく読むと中和剤による凝固と書いてあります。納得できました。

 当局も、一生懸命対処しているのでしょう。頑張って欲しいし、非難するつもりは毛頭ありません。恐らく、今出来るベストでしょう。

 心配なのは、今後です。ご存知のように、中国はユーラシア大陸の大国です。広大な土地を河川はゆっくり流れ、流域の住民の生活(水や農作物)を支えています。一方、火山列島日本の河川は、急流で流域面積は、比較的狭いことが特徴です。

 広大な流域を持ち、多くの人々を支える大河の上流で、今回のようなアクシデントがあると、大変なことになってしまいます。特に、大陸(内陸)の河川であれば、なおさらです。上水中のカドミウム測定や水田の土壌中カドミウム濃度が、今後とも測定されることでしょう。

 かつての日本がそうであった様に、環境を疎かにして、経済至上主義だけで突っ走ると、とんでもないことになることは明らかです。

 私たちも、下水に流すとき、環境に負担を掛けないか?考えるべきでしょう。
いろいろな教訓があった出来事でした。

さて、話題を日本の豪雪地帯に移します。続きはまた今度ね。

2012年2月3日金曜日

本当の資源 その1 イタイイタイ病

みなさん、こんにちは。

寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?

特に日本海側にお住まいの皆様、記録的な豪雪で大変だと思います。
本日、山形から来院された患者さんも「半端じゃないよ!今年の雪はすごいよ」 と仰っていました。

そこで、”白いダイヤモンド” のお話です。

 メディアによると、広西チワン族自治区(中国南部、ベトナムとの国境の町です)を流れる竜江で基準値を超える毒性物質の カドミウム が検出され、飲料水の安全が脅かされているそうです。


写真は竜江で、水質調査のサンプルを採取しているところ。こんなに広く水量の多い河です。
この水量で基準値を超えたカドミウム?いったい、どの位の量が流出していたのでしょう??


 宜州市のダム湖で魚が大量に死んでいるのが発見され、調査の結果、汚染源が河池市にある広西金河鉱業とわかり、操業停止の措置がとられた。当局は、中和剤を河にまき住民に安全宣言をしたと。


 カドミウムは、元素記号48番の金属元素です。日本では、神岡鉱山の精錬に伴う廃水により、富山県神通川流域の イタイイタイ病 (1910年から70年頃まで大発生)で有名です。
水系を通じて下流の水田土壌に流入・堆積し、農作物(特に米)や水を介して人体に蓄積します。


竜江河周辺の水田と水路です。無事を祈ります。


 カドミウムは、人体に蓄積すると、腎臓の尿細管機能異常をきたします。


 腎臓は、ご存知のように人体のこし器です。不要なものは捨てて、必要なものを再吸収しているんです。カドミウムはここを壊してしまう。だから腎臓が笊(ザル)になっちゃうんですね。


 初期症状は、腎臓がザルになっちゃうので、多尿、口渇、多飲なんです。


 腎臓で、カルシウムの再吸収が出来ないため、血中のカルシウム濃度が低下します。筋肉が異常収縮して痙攣を起こしたり知覚過敏になります。人体は骨を溶かして、何とか血液中のカルシウム濃度を維持しようとしますが、ザルからもれっぱなしなので、どんどん悪化します。


 やがて骨が溶けて、スカスカ、ボロボロになってしまいます。骨粗しょう症の酷い状態と思ってください。骨、特に関節をやられ、変形し非常に痛い。自分の重みで骨折(病的骨折といいます)する。もともと骨がもろい、多産の高齢女性に患者が集中しました。


 来る日も来る日も 「痛いよ・・痛いよ・・」 って言って。最終的には、寝たきりで衰弱し多くの方が亡くなりました。医者として最も無力感を感じるときです。何とかならないのか・・・


イタイイタイ病の患者さんを診察する萩野昇先生
 
 患者さんがほぼ全員、稲作などの農作業に長期に渡って従事していた農民であったため、風土病とかで、悲しいこと偏見差別がそうです。


 そこを地元の萩野病院 萩野昇先生 が、目の前で原因不明の病で苦しむ患者さんの診療をしながら、原因を究明したんです。


 1961年日本整形外科学会で、鉱山のカドミウムが原因と発表しました。萩野先生、僕と同じ46歳のときです。(萩野先生については、ドラマがあるのですが詳細はこちらで)


話を現在の中国に戻します。続きはまた今度ね。