いかがお過ごしですか?
今日、ある患者さんが亡くなりました。
約5年の闘病生活、僕のところに来て2年半でした。
多発肺転移でSorafenib (ネクサバール)が効かなくなってからでした。
野球で言えば、9回 10 対 0 で登板です。敗戦濃厚です。
でも、ここからが僕らの出番です。
直球(5FU)を如何に投げるか? です。
この患者さんは、逆転こそしないものの、何とか9回裏に追いついて、延長戦を戦っていました。
関西から通ってくれましたが、何時もの口癖が、「もらった時間ですから・・・・」と。
どうしてこんなに大人になれるんだろう?っていつも思っていました。僕より10歳も若いのに・・
本日、朝から、肺転移による喀血が起こりました。病室でやれる処置は全てやりましたが、救えない無力感。どうにもならないです。
ただ出来ることは、そばに居てあげることだけです。
お子さんはまだ中学生と小学生です。急いで東京に向かってもらいましたが、幸か不幸か間に合いませんでした。
「きっと、神様の思し召しですね・・・」と奥様にお話しました。
本人は辛いところを子供に見せる事無く、妻に甘えられたわけですから。
亡くなった後、看護婦さんたちが綺麗に清拭してくれました。さっきまでの苦しみはウソのようです。ちょっと微笑んだような顔でした。
お子さんたちも、微笑んだお父さんに会えてよかったと思います。
関西まで、お盆ラッシュと台風のダブルパンチでしたが、寝台車でお帰りになりました。
息子さんたちに別れ際にお話ししました。
「お父さんは、今、亡くなったけど、お父さんの魂はずっと君たちの心の中で生き続けているんだよ。なぜなら、君たちの半分はお父さんで出来てるから・・・」
「お父さん半分、そしてお母さん半分、それが医学的にいう君たちだからね。」
「これから辛いこと、大変なこと、きっとあるだろう。でも力を合わせ、お母さんを助け、頑張って生きていくんだよ」
「なぜなら、君たち男の子だからね」って。
僕に患者さんが乗り移って、しゃべっていました。
僕が言おうとしたわけではありません。患者さんの部屋に入ったら、自然に込み上げてきた言葉です。
間に合わなかった分を、取り戻せました。
神様、ありがとうございます!
最後になりましたが、ご冥福をお祈りします。
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