2014年8月9日土曜日

父に代わって

みなさん、こんにちは!

いかがお過ごしですか?



今日、ある患者さんが亡くなりました。

約5年の闘病生活、僕のところに来て2年半でした。

多発肺転移でSorafenib (ネクサバール)が効かなくなってからでした。

野球で言えば、9回 10 対 0 で登板です。敗戦濃厚です。

でも、ここからが僕らの出番です。



フォークやカーブ(標準的治療)は使い切り、後は全て直球勝負です。

直球(5FU)を如何に投げるか? です。

 この患者さんは、逆転こそしないものの、何とか9回裏に追いついて、延長戦を戦っていました。

 関西から通ってくれましたが、何時もの口癖が、「もらった時間ですから・・・・」と。

どうしてこんなに大人になれるんだろう?っていつも思っていました。僕より10歳も若いのに・・


本日、朝から、肺転移による喀血が起こりました。病室でやれる処置は全てやりましたが、救えない無力感。どうにもならないです。

ただ出来ることは、そばに居てあげることだけです。

 お子さんはまだ中学生と小学生です。急いで東京に向かってもらいましたが、幸か不幸か間に合いませんでした。

「きっと、神様の思し召しですね・・・」と奥様にお話しました。

本人は辛いところを子供に見せる事無く、妻に甘えられたわけですから。

亡くなった後、看護婦さんたちが綺麗に清拭してくれました。さっきまでの苦しみはウソのようです。ちょっと微笑んだような顔でした。

お子さんたちも、微笑んだお父さんに会えてよかったと思います。

関西まで、お盆ラッシュと台風のダブルパンチでしたが、寝台車でお帰りになりました。

息子さんたちに別れ際にお話ししました。

 「お父さんは、今、亡くなったけど、お父さんの魂はずっと君たちの心の中で生き続けているんだよ。なぜなら、君たちの半分はお父さんで出来てるから・・・」

「お父さん半分、そしてお母さん半分、それが医学的にいう君たちだからね。」

「これから辛いこと、大変なこと、きっとあるだろう。でも力を合わせ、お母さんを助け、頑張って生きていくんだよ」

「なぜなら、君たち男の子だからね」って。


僕に患者さんが乗り移って、しゃべっていました。

僕が言おうとしたわけではありません。患者さんの部屋に入ったら、自然に込み上げてきた言葉です。

間に合わなかった分を、取り戻せました。

神様、ありがとうございます!

最後になりましたが、ご冥福をお祈りします。


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