2009年11月18日水曜日
岡本先生・戸田先生・小椋先生 お祝いの会 に参加して
岡本先生(JR東京総合病院)・戸田先生(三井記念病院)・小椋先生(東京警察病院) の部長昇進・就任祝いの会が開催されました。
大学研究室と関連施設の交流・親睦を図る目的も兼ねています。 大学病院の利点、一般病院の利点を相互補完しながら、より良い医療を目指すのが本会の趣旨です。この会を発展させて、人材育成や交流の場として勉強会を行う予定です。私どもは、視野を広く保ち医療の質を向上させる使命があります。臨床研究によって日常医療を検証し改善を図ることによって、医療が進歩するものと信じています。小さな努力でも、みんなで力を合わせて、継続することによって、いつかは”坂の上の雲”に手が届くと教えて頂きました。
写真は、会場のホテルに飾ってあったクリスマスツリーです。一足早くイルミネーションを楽しみました。
第1回 帝京市原・溝口・杏雲堂合同消化器病研究会
第1回帝京市原・溝口・杏雲堂合同消化器病研究会が開催されました。
これは当科の佐藤新平先生が帝京市原病院と溝口病院でラジオ波治療を行っていることと帝京ちば総合医療センター病院も溝口病院も東京大学消化器内科と人事交流があることから、合同で勉強会を行い交流を深める目的で企画しました。今回は初回なので「各施設における診療の実際」というタイトルで各施設の現状と特徴を発表してもらいました。お互いに補完しあって人材育成を図るとともに刺激を与え合う良い関係を構築したいと思います。
研究会終了後は、京葉線東京駅に隣接するトキア内のベルジアン ビアカフェ アントワープ セントラルで懇親会を行いました。週末の丸の内で楽しいひと時を過ごしました。
第34回リザーバー研究会に参加して
第34回リザーバー研究会が、愛知県がんセンター中央病院国際医学交流センターで開催されました。一昔前は大腸がんの肝転移に対する動注化学療法が演題の半数以上を占めていたのですが、最近は肝細胞癌の動注化学療法やCVポートといって全身化学療法用のカテーテル埋設の演題が多くなってきています。
大腸がんの肝転移の治療として進歩した動注化学療法ですが、分子標的薬という新しいタイプの抗がん剤を併用した全身化学療法が、大腸がん肝転移の標準的治療法となったため、大腸がん肝転移の領域では動注化学療法は全身化学療法に取って代わられました。大腸がん肝転移は大腸に原発巣があり、その病変が血流を介して肝臓に転移した結果です。つまり血流に乗って既に全身散布されてしまっている状態です。そのため肝転移に限局していれば動注化学療法は効果がありますが、肺転移など全身に散布された状態では全身化学療法の方が理にかなっている訳です。
一方、肝細胞癌は肝臓が原発でありしかも比較的転移しにくい性質があります。さらに肝細胞癌は動脈血が豊富に流入しているため動注化学療法を行うには最も適した腫瘍です。特に門脈腫瘍浸潤を伴う進行肝細胞癌は一部の切除可能な症例を除き有効な治療はありませんでした。このような症例に動注化学療法は絶大な効果を発揮します。
今回、肝細胞癌のセッションを関西医科大学放射線科の米虫敦先生と司会させていただきました。動注化学療法で高度進行肝がんを治療して奏効した症例が報告されました。
ランチョンセミナーでは「進行肝細胞癌に対する化学療法-ソラフェニブの登場後、肝動注化学療法はどうなるか?」というタイトルで国立がんセンター東病院の池田公史先生が講演されました。海外で行われたプラセボ(偽薬)との無作為比較試験で有効性が認められた唯一の薬剤であるソラフェニブを標準治療にすべきとのことでした。確かにそうかもしれませんが、全国民が平等に最高水準の医療が受けられる本邦において、しかも肝細胞癌の診断から治療まで世界最高水準をいく本邦の実績を踏まえ、うまくソラフェニブを本邦の治療に組み込めば良いと感じました。動注化学療法の欠点は治療が奏効しない患者の予後は改善しない点にあります。約半数の非奏効例に対して早期にソラフェニブに切り替えることによって少しでも延命が図れられれば良いと思いました。奏効例はソラフェニブより延命できることは過去の検討で自明です。いずれにしても更なる検討を重ねる必要があると思います。
帝京大学ちば総合医療センターの学生講義
帝京大学ちば総合医療センターで1ヶ月に一度、学生講義を担当しています。医師となる心構えを中心に人間学そして医師国家試験対策など肝臓から少し離れて、私しか出来ない(しない?)講義を目指しています。講義の後半は腹部超音波の実践演習です。学生さんがお互いに腹部超音波検査を行い肝臓をはじめ腹部臓器に親しんでもらいます。
実習後は恒例(?)の質疑応答です。内科実習恒例の”質疑応答at 居酒屋さん”を聞きつけ他科を回っている学生さんも参加し賑やかでした。彼ら彼女らが明日の医療を支えてくれます。これからが更に楽しみです。
学生さんから頂いたコメントです。
先日は僕ら学生を食事に誘って頂きありがとうございました。長年いろいろな先生にご指導いただきましたが、小尾先生のように耳を傾けたくなる先生は初めてお会いした気がします。
今でも「なるほど!」と思える先生のお話を思い出します。
● 病棟で見るカルテも、ただのデータじゃないんだ。偶然見かけた生年月日も、誕生日だったら患者さんにひとこと「おめでとう」って声かけるんだよ。自分だったら嬉しいよね。
● 先生って呼ばれるからって、自分がえらい訳じゃないんだ。僕が君たち学生と楽しくお酒を飲めるのも、いま看護師が僕の目となり耳となって、患者さんを見守っていてくれるからなんだよ。
掃除のおばちゃんだって、患者さんが気分が悪いときに知らせてくれるかもしれない。そうやって、人とのつながりが最終的には患者さんの役に立つこともあるんだよ。おごっちゃいけない。大切なことだよ。
僕らも先生とお話しできて、ちょっと成長できた気がします。
また機会がありましたら、お食事にご一緒させてくださいね。楽しい時間をありがとうございました。
帝京大学医学部 学生一同
2009年11月17日火曜日
第17回日本消化器関連学会週間
JDDWが京都国際会議場にて開催されました。
当科からは元山天佑先生が「体外式腹部超音波による進行大腸癌の診断能の検討-腹部CTとの比較」、佐藤新平先生が「転移性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の局所制御能の検討-肝細胞癌との比較-」、小尾が「高度進行肝細胞癌に対するインターフェロン併用5FU全身化学療法」を発表しました。小尾の演題内容は、遠隔転移などでインターフェロン併用5FU全身化学療法を行った症例を検討したものです。100例を超える症例を検討することによって、まず1コース試験的に化学療法を行い効果の反応を見て、2コース以上行える症例は、例え遠隔転移があっても約1年延命できることを証明しました。
元山先生の学会記
今年もJDDWでポスター発表のする機会に恵まれました。今回で2回目でしたが、やはり発表の時は緊張してしまい、司会の先生のおっしゃっている事などもほとんど耳に入っていない状態でしたが、何とか無事に終了しました。これも最後まで面倒をみてくれた佐藤新平先生のおかげです、ありがとうございました。夜は先生方と京都の景色を楽しみながら食事をしたり、または大学時代の友人とひさしぶりの再開してお互いの近況を教えあったりと充実した時間を過し、よき思い出を作ることができ、元気が出てきました。今回の学会で学んだ事を日々の診療に生かせるようにまい進したいと思います。(元山天佑先生記)
佐藤新平先生の学会記
私は、ポスター発表で転移性肝癌のラジオ波焼灼療法についての成績を発表しました。転移性肝癌も肝細胞癌のラジオ波焼灼療法と同様、局所の制御に有効であるということを述べました。夜は久々に恩師の小俣政男先生(山梨県顧問)とお会いでき、会食を御一緒させていただき、有意義な一夜となりました。(佐藤新平先生記)
水曜日の夜は、小俣政男先生を囲んで、京都国際会議場近くの「ざくろ」で食事会を行いました。モダンな和空間で大学病院で一緒に働いた仲間たちと楽しい一時を過ごしました。「ざくろ」は、杏雲堂前院長の高橋俊雄先生に紹介して頂いたお店です。偶然にも高橋先生にもお会いでき素晴らしい夜でした。
木曜日の夜は、帝京大学ちば総合医療センター、帝京大学溝口病院、自衛隊中央病院の先生方とジョイントして鴨川沿いの京料理店「十一屋」で食事会を行いました。鴨川を渡る秋風が気持ちよかったです。
金曜日、新幹線に乗るまでの間、京都駅南にある東寺を訪ね薬師如来像を見てきました。やはり薬師如来は民を救うオーラに包まれています。横には日光菩薩、月光菩薩を携えています。言わば日勤の看護師さんと夜勤の看護師さんですね。皆様の病気平癒を祈願しました。
留守を守ってくれた佐藤隆久先生、菅田美保先生ありがとうございました。ThermoDox Investigators Meeting
ThermoDox Investigators Meeting が開催されました。
ThermoDox(サーモドックス)とは熱感受性リボゾームにドキソルビシンという抗がん剤を封入した薬剤です。サーモドックスを肝がんのラジオ波焼灼術(熱で癌を壊死させる治療)と併用する治験が行われます。サーモドックスは、ラジオ波などの熱を加えることによってリボゾームに封入された抗がん剤を放出する作用があります。つまり癌に局所的に抗がん剤を集めることが出来ることが期待されています。国際共同治験で米国・カナダ・イタリア・香港・韓国・日本・中国などで行われています。本邦では当院を含め、岩手医科大学病院、東京大学病院、関東中央病院、JR東京総合病院、日本赤十字医療センター、千葉大学医学部付属病院、和歌山県立医科大学病院、三重大学医学部付属病院、岡山大学医学部付属病院(順不同)が参加しています。
治験参加基準は①肝細胞癌であること②腫瘍個数が4個以下で最大径が3cm以上の病変が少なくとも1つあり、7cmを超えるものが無い。最大径が5-7cmの大きな腫瘍がある場合、その他の腫瘍は5cm未満であること。以上が試験参加基準です。詳細は外来でお尋ね下さい。
2009年11月11日水曜日
第1回OTUKA肝癌栄養治療フォーラム
2009年10月18日日曜日
東京大学消化器内科25研 関連病院会議
東京大学消化器内科 25研の先生方、東大医科研病院 加藤直也先生、国立国際医療センター 今村雅俊先生、JR東京病院 赤松雅俊先生、関東中央病院 小池幸宏先生、日赤医療センター 吉田英雄先生 谷口博順先生、都立駒込病院 今村潤先生、当院からは私と佐藤新平先生が参加しました。
近状報告と多施設共同臨床試験の進捗状況と問題点が議論されました。地道な努力ですが、肝癌撲滅のため皆で力を合わせ頑張ります。
2009年10月17日土曜日
帝京大学ちば総合医療センターの学生講義
患者さんや病院のスタッフとの接し方は、当たり前ですが誰も教えてくれません。もう成人している訳ですから、「俺の背中を見てついて来い」といきたいのですがなかなかうまくいきません。ただ純粋な学生さん達なので教えれば良く理解してくれます。まさに山本五十六大将の「やってみせ、言って聞かせ、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」です。
講義終了後は、食事会で質疑応答(笑)です。姉ヶ崎駅前のひさまつです。
2009年10月4日日曜日
”内科” の掲載
佐藤新平先生は、≪進行肝癌に対する新たな展開≫の項でインターフェロン併用5-FUの臨床成績の論文を担当してくれました。小尾は、座談会に参加させていただきました。正念場を迎えた肝癌撲滅戦略というタイトルで、山梨県特別顧問 小俣政男先生が司会をされ日本大学消化器外科の高山忠利先生、東京大学消化器内科の椎名秀一朗先生そして私の4人での座談会内容が掲載されています。
以前にも記載しましたが今まで増加の一途であった本邦の肝がん死亡者数は減少に向かいました。原因となるウイルスが同定されウイルス感染阻止、感染駆除、炎症の制御を行うことや、スクリーニングシステムの確立、治療技術の向上など、多くの人々の努力の結晶の賜物です。今後も更なる努力を重ね肝がん撲滅に向けて邁進したいと思います。
2009年10月3日土曜日
SURF トライアル記念肝癌学術講演会のお知らせ
2009年9月29日火曜日
”ソラフェニブとIFN+5FU動注の比較試験”がスタート
太平洋に昇る朝日です。
今日”ソラフェニブとIFN+5FU動注の比較試験”がスタートして、初めての患者さんが登録されました。比較試験とは何か?という質問に答えるためにまずガイドラインとエビデンスについて説明したいと思います。
診療ガイドラインは、肝機能と腫瘍の状態によって、個々の患者さんに推奨される最善の治療法が提供されるように作成されています。その根拠となるのがエビデンスと呼ばれる質の高い臨床研究です。例えば動注化学療法が本当に予後を改善するのか?これを証明するためには、ある基準を満たした患者群を無作為に2群に分けて、片方は動注化学療法を行い、もう片方は対症療法(症状に応じた治療で積極的ながん治療は行わない)を行い、この2群を比較して統計学的に有意差が無ければ有効な治療と認められないのです。ただし本邦は、国民皆保険であり国民は平等に治療を受けられる制度になっています。がん治療に対して、片方が化学療法、もう片方は積極的な治療はしないという無作為比較を行うことに躊躇していました。私たち医者は、なんとなく良さそうな治療を提供し、患者さんはそれを受け入れる、そういう土壌が出来てしまったと思うのです。本来は新しい治療を導入するためには、必ず比較試験を行い、有効性と安全性を証明して初めて導入されるべきなのです。肝癌の特に抗がん剤の分野では、この証明が曖昧だったため、海外において動注化学療法は未だ認知されていないのが実情です。
しかし5月からソラフェニブ(ネクサバール)が使えるようになりました。この薬は肝癌の抗がん剤で唯一、質の高い臨床試験において対症療法と比較し予後改善の有効性が証明された薬です。そこで私たちは従来本邦で行われてきた動注化学療法とソラフェニブを比較し、その安全性と有効性を証明することにしました。患者さんとともに、本邦の進行肝癌の医療を進歩させていきたいと思います。
第24回東京肝癌局所療法研究会
今回の研究会テーマは”肝癌集学的治療の工夫”でした。これは色々な治療法を組み合わせて、いかに安全・確実に治療したかという具体例を呈示し合って、お互いの技術を切磋琢磨しようという狙いで開かれた研究会です。
発表中の佐藤新平先生
当院から佐藤新平先生が、副腎転移を伴うVp4肝細胞癌にIFN併用5FU動注化学療法とRFAが奏効した一例を発表しました。この患者さんは門脈の本幹(根本)まで腫瘍が浸潤していました。肝臓の腫瘍は、門脈浸潤も含め動注化学療法で治療しました。抗がん剤がとても良く効いて肝臓内の腫瘍はほぼ消失しました。しかし、この患者さんは副腎転移も合併していました。副腎とは腎臓の頭側にある臓器です。副腎は肝動脈ではなく副腎動脈から養われています。そのため肝動脈から注入(動注)している抗がん剤は副腎に届きません。肝臓の中は片付いたのに副腎は丸残りです。このため副腎転移を佐藤新平先生が得意のラジオ波焼灼療法(肝癌治療の応用)で治療し、安全・確実に治療が終了したことを報告しました。
研究会の終了後、丸の内仲通りにあるワインショップ・エノテカ丸の内店のラウンジで、大阪鉄道病院の光本先生、帝京大学ちば総合医療センターの東郷先生、海老原先生、渡邊先生、黒木先生、いちのみやクリニック院長の藤島先生、都立駒込病院の今村先生を迎えワインを頂きながら談笑しました。他施設の先生方と仕事の話や趣味の話などで語り合える研究会後の一杯は格別です。
上 左から小尾、今村先生、黒木先生、佐藤隆久先生
中 左から海老原先生、渡邊先生
下 左から東郷先生、藤島先生
2009年9月7日月曜日
肝疾患病診連携懇話会サマーセミナー2
2009年9月1日火曜日
第3回肝病理よろず相談勉強会に参加して
帰りの山門から駿河湾が望めます。最高です。勇気が湧いてきます。
2009年8月31日月曜日
千代田区薬剤師会勉強会講演
2009年8月10日月曜日
新肝臓病研究会
機会を与えて下さいました小俣政男先生、座長の労をおとり頂いた山梨大学消化器内科榎本信幸教授、一緒に講演をなさってくれた山梨大学放射線科市川智章准教授には大変お世話になりました。この場を借りて感謝申し上げます。
ラジオ波焼灼療法の紹介 佐藤新平先生
平成4年東邦大学医学部卒、 肝がん治療歴、15年
ラジオ波 治療件数 800件
原発性肝がんは、30年前の4倍に増え、日本人では肺がん、胃がん、大腸がんについで第4番目に多い癌です。その80%はウイルス性慢性肝炎、肝硬変を合併しており、手術ができるのは3割ほどしかなく、手術ができても5年以内に80%でがんが再発します。そのため手術以外の効果的な治療法として、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法が注目されています。近年、転移性肝がんの治療にも応用され、良好な成績が報告されるようになってきました。
当院のラジオ波焼灼療法の特徴として 「眠っている間に治療が終わる」 いわゆる “無痛ラジオ波焼灼療法”があげられます。これは静脈麻酔を用いることにより、患者さんは完全に眠ったまま、痛みをまったく感じることなく行われます。全国800施設でラジオ波焼灼療法がおこなわれているとのことですが、当院ほど完全にこの「無痛ラジオ波焼灼療法」が実践されている施設はありません。この成績は米国消化器病学会、アジア太平洋肝臓病学会、日本肝癌研究会などで報告しております。“無痛ラジオ波焼灼療法”により、患者さんに不利益を被ったことは1度もありません。患者さんの声欄に掲載いたしましたが、大変喜ばれております。学会で発表しますと完全に意識がない状態では患者の痛みのサインをみのがすのではないかとよく言われますが、200症例以上の経験から、まったくその心配はありません。息を止めなくても針を腫瘍に挿入できる技術もあります。麻酔をかけることによる偶発症も1例もありません。
“無痛ラジオ波焼灼療法” 実施中の写真を提示いたします。
治療中の佐藤新平先生(手前)と患者の呼吸管理中の山田章盛先生(奥)
患者さんの周囲には術者、助手、麻酔医、看護師、機械を操作する技師を配置し、
血圧、心電図、酸素モニターを装着し安全には万全を期して治療に望んでいます。
けして安易に治療していないことがわかります。
● 患者さんの声
まず最初に当院でラジオ波焼灼療法を受けられた患者さんの声を紹介します。
5月、6月に治療を受けられた患者さん連続10人を掲載いたします。
1, 東京都、75歳 女性
帝京大溝口病院、帝京大ちば医療センターと再発の度に佐藤先生にお世話になって、佐藤先生の転勤の度に、私も病院を換えてまいりました。今回も安心して治療受けられました。
2, 神奈川県、67歳 男性
治療が難しい場所にがんが出来て紹介されてきましたが、安全に完全に治療していただき助かりました。
3, 東京都、65歳 男性
まったく痛くありませんでした。寝ている間に治療が終わりよかったです。
4, 東京都、61歳 男性
最初は不安でしたが、スタッフの皆さんも親切で安心しました。感謝。
5, 東京都、71歳 女性
私は肺がんもあるのですが、この治療で肺がんも治療していただけたらありがたいです。
6, 東京都、70歳 女性
治療中のこと少し記憶していますが、痛みはありませんでした。
7, 神奈川県、67歳 男性
一度で治療が終わりありがたかったです。痛みはまったくありませんでした。
8, 山梨県、72歳 男性
いい気持ちで寝てしまいました。
9, 東京都、80歳 男性
他施設で治療したときは右肩がとても痛く、また血圧も200以上に上がったようですが、今回はまったく痛みをかんじませんでした。血圧も落ち着いていたと聞いて安心しました。
10, 東京都、66歳 男性
東大、帝京大溝口、今回の杏雲堂と3回佐藤先生に治療していただきました。郷里の宮崎に転居しますが、宮崎で同じような治療ができるか心配です。再発したらまたお世話になります。
●ラジオ波焼灼療法=がん組織を熱で焼く
ラジオ波焼灼療法は、超音波で観察しながら、がん組織に直径1.5ミリほどの電極を挿入し、周波数の比較的低いラジオ波を流して腫瘍を60度以上の熱で誘電加熱し、がん細胞を壊死(えし)させる治療法です。
使用する針は非常に細く、傷跡は残りません。
● 適応
肝がんは原発性肝がん(肝細胞がん)と転移性肝がんの2種類があります。日本の学会では2 cm以下の肝細胞がんであれば切除もラジオ波焼灼療法も長期成績に変わりなくどちらを選択しても良しとされています。肝細胞がんに対するラジオ波焼灼療法の適応は腫瘍の長径3センチ、3個以内が一般的ですが、肝機能が良ければ、この条件を超えていても治療できることもあります。当院では単発では長径5センチまでを適応としております。
転移性肝がんは肝硬変を合併していないため、大きく、たくさんの腫瘍を焼灼することが可能です。しかし、まだこの治療法の歴史が浅いために、手術か抗がん剤治療か、ラジオ波焼灼療法がいいかの結論がでておりません。しかし、たとえば2cm以下の肝がんであればわずか6分間の焼灼で、安全に、しかも無痛でがんを除去できるわけですから、非常に有効な治療であると考えております。転移性肝がんの場合は、肝臓の機能が良好である場合が多く、肝細胞がんより適応範囲は広くなります。当院では最大5cm、5個以内、単発であれば最大8cmまでとしています。私たちの経験では最大10cm、腫瘍個数では15個までの転移性肝がんを治療した経験があります。
● 経験豊富な術者
私、佐藤新平が杏雲堂病院においてラジオ波焼灼療法を担当しております。
現在私は当院以外にも、帝京大学ちば総合医療センター、帝京大学溝口病院に毎週出張してラジオ波焼灼療法を実施、指導しております。1996年より肝がん治療のメッカである東京大学消化器内科で小俣政男前教授、椎名秀一朗講師のもと、肝がん治療を学び、エタノール注入療法、マイクロ波熱凝固療法、ラジオ波焼灼療法を中心に15年間の治療経験を有しております。ラジオ波焼灼療法ものべ800人以上の患者さんに治療してまいりました。2008年11月帝京大学ちば総合医療センターより異動し、現在に至っております。
● 低い偶発症
ラジオ波は外科的切除と比較してはるかに侵襲が少なく、安全な治療法といえます。しかしながら、生身の人間に針を刺し、肝臓に熱を加えるという治療がまったく安全なはずはありません。まったく問題なく治療が完遂しても、出血や感染をきたす可能性があり、これを偶発症といいます。一般的に何らかの処置が必要であった偶発症の頻度は約3%と言われ、3000人に一人の死亡例が報告されております。
私どものラジオ波の偶発症の低さには定評があり、この三病院において、過去5年間に350人の肝がん患者さんを治療してまいりましたが、治療を要した合併症は3人(出血2人、輸血にて対処)の0.9 %でした。RFAの偶発症は一般には3 - 5%と言われており、非常に偶発症が低いことがわかります。これは過去15年間に及ぶ肝がんの治療の経験から、肝臓のあらゆる部位にできた肝がんにもアプローチ可能なテクニックがあり、またその危険も熟知していること、また時には無理をしないことなどよると思われます。
● 治療後の外来での経過観察
当院で治療を受けられた患者さまは私が責任をもって外来で経過観察させていただきます。実際に治療した医師が経過観察することは、再発の多い肝がん患者さんを見るうえで非常に大切なことです。つまりどの部分を治療し、あるいは経過をみている腫瘍か、CTでどのように映っているか、肝機能はどうであったかなどの情報は術者がもっとも記憶しているからです。月に1回外来受診していただき、4ヶ月に1回の私自身による腹部超音波、6ヶ月に1回のCT検査を実施し、早期発見に努めています。再発した場合は、大学病院では入院待ち一か月という施設もありますが、当院では入院待ちはまったくなく速やかに入院し、治療が受けることが可能です。
● 学会発表、論文発表
私どもは肝がんの治療を15年以上にわたって実施してまいりましたが、その成績は随時学会、研究会、国際学会、論文などに発表してまいりました。東大時代から日本の学術集会で発表はのべ300回、国際学会に自身の発表は25回を数えます。40編の英語論文発表の実績があります。そのほとんどは肝がんに関するものであり、肝がんに関する日本、世界の状況やトレンド、成績など熟知しております。それらをふまえた上で最良な方法で治療を提供することが可能です。患者さんのデータから新たな知見を見つけ、医学の発展に貢献するという視点をもってやってまいりました。今後もそのスタンスは変わりなく、治療を受けられた患者さんは、その後は責任もって診療させていただきます。私が今でも、帝京大溝口病院、帝京大ちば総合医療センターに出張しているのは、「自分が治療した肝がん患者さんは自分が責任をもって診る」ためであります。
●仮に進行肝がんになったとしても
当科には進行肝がん治療の第一人者、小尾俊太郎部長がおります。私とは同い年で、彼のもとには全国、外国から患者さんが治療を求めて集まります。また、当院は肝がん治療数で東大病院に次いで全国第2位の実績があり(表)、承認前の治験薬をいち早く提供することが可能です。承認前といっても海外ではすでに使用され実績を有している薬です。これは製薬会社負担となるため最新の治療が無料で受けることが可能です。このように、当院では早期の肝がんから進行肝がんまで世界でまずまちがいなくトップの肝がん治療をうけられる環境にあります。
● 当院で最近治療された患者さんの画像写真を提示いたします。
乳がん肝転移の患者さんの写真です。左が治療前、右が治療後です。完全に腫瘍が消失しているのがわかります。乳がんも肝転移ができてくると抗がん剤のみで治療する施設が多いのですが、この患者さんは術後年半経過していますが、治療部の再発もなく元気にくらしております。
【当科での成績】2008年11月~2009年7月までの9ヶ月
全症例数 計35症例
肝細胞癌28例、転移性肝癌7例、全セッション数35セッション
偶発症 35例中、全例に治療成功し、偶発症は1例もなし。
【転移性肝癌症例】2008年11月~2009年7月までの9ヶ月
転移性肝癌症例 計7症例
結腸癌6例、卵巣癌1例
【当科でのRFAの特徴】2008年11月~2009年7月までの9ヶ月
平均年齢63.7歳、平均入院期間6.0日、
平均結節数1.3個(最多5個)、平均最大腫瘍径22mm(最大75)
平均セッション数1.0回
【担当医の経験と成績】
佐藤新平:約800例のRFAの経験、治療を必要とする偶発症発生率4/800=0.5%
● 最後に
当院はJR御茶の水駅より徒歩3分の立地で、周囲には大学病院が林立し、病院密集地域です。その中で肝臓科という肝臓に特化した肝臓がん専門病院です。
私たちのモットーとしていることは「安全にかつ完全に」治療することです。完全にがんを取りきれなければ、意味がないと考えています。ラジオ波焼灼療法の治療は2004年から保険適用にもなり、あちこちの施設で広まってきてはいますが、技術格差は歴然とあるのが事実です。私たちは、最高の技術を磨いて、間違っても患者さんに不利益を与えないようにと、日々努力を重ねております。
2009年8月4日火曜日
第7回肝臓病研究会シンポジウム
2009年7月30日木曜日
釧路医師会 学術講演会
進行がんの治療や心臓病の手術など比較的脚光を浴びやすい領域です。しかし本当に大切なことは脚光を浴びることの少ない地元で黙々と患者さんと向かい合っている開業の先生方や地方病院に勤務され、第一線で頑張っている先生方の存在です。我々の領域でも、検診で肝炎を発見して頂き病院と診療所が連携して適切な治療が行われれば発癌を抑止することが出来ますし、肝癌の死亡者数も減らすことが出来ます。難しい心臓の手術も同じです。地道ですが高血圧や糖尿病、高脂血症のコントロールそして禁煙の励行などで病気を未然に防ぐことが本来の姿であり、現場の先生方が真の脚光を浴びるべきと思いました。
医師不足の波は道東では深刻です。釧路から根室間約120km離れているのですが、1日1往復、根室から釧路まで通院専用バスが出ているそうです。朝、根室を出て2時間以上かけて釧路の3病院(市立、労災、日赤)を回り、夕方、再び2時間かけて根室に帰るそうです。同様に利尻から往復4時間かけてIFN治療を行っている患者さんも少なくないようです。冬の厳しさを考えると想像を絶します。釧路市内でも循環器の先生は市立病院に集まって医師自ら集約したそうです。行政任せにせず、誰が悪いかではなく、住民(患者さん)と医師が、日本のより良い医療のため、真剣に考える時が来たようです。
早朝のジョギングで、かつて日本一の水揚げ量を誇った港の跡地を走りながら、自分に何が出来るか?考えさせられました。
かつて、水産加工場などで賑わっていた街並も駐車場となった空地が目立ちます。
年輪を刻んだ港のレンガ倉庫
最後になりましたが、座長を務めて頂きました釧路労災病院副院長の宮城島拓人先生には大変お世話になりました。この場を借りまして感謝申し上げます。
帰りの釧路空港にあったふくろうのオブジェ
第45回日本肝癌研究会に参加して
当科からは、佐藤新平先生が パネルディスカッション1「凝固療法の適応と限界及び合併症」のセッションで、「転移性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の局所制御能の検討-肝細胞癌との比較-」と口演1「進行肝癌に対する治療(動注、放射線、外科手術)」のセッションで、「進行肝細胞癌に対するIFN併用5FU動注化学療法-どのような症例にどのような基準で動注するか-」を発表しました。
発表中の佐藤新平先生
元山天佑先生は、問題症例検討会4「肝癌診断困難例」のセッションで、26歳女性の肝腫瘍を呈示しました。診断が難しかったのですが、この検討会に呈示したことによって、「類上皮血管内皮腫」と診断されました。切除以外の治療法は確立されていないのですが、IFN併用5FU動注によって腫瘍が縮小しています。
発表前の最終チェックをしている元山先生
発表中の元山先生
元山先生の学会参加記
第45回日本肝癌研究会に参加して
はじめまして。四月から杏雲堂病院肝臓科に勤務しております、元山天佑と申します。
私は7/3に問題症例検討会での発表のため、第45回日本肝癌研究会に参加いたしました。
初めて博多に行ける喜びもありましたが、いつもながら発表のスライド作りには苦労しました。いつも今度こそは余裕をもって準備しようと思うのになかなかそうはいきません。指導してくださる佐藤先生からは何度もダメ出しをくらい、学会前に決まっておこる親知らずの痛みに耐えながら前日ギリギリにスライドを間に合わせました。
発表当日は小尾先生、佐藤先生の発表を見に行きながら自分の発表に備え、いよいよ本番。
「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせながらなんとか最後までやり遂げ、その後の質疑応答もなんとか乗り切り無事終了。今回の発表に際して九州大学相島先生のご厚意により病理の追加免疫染色から確定診断に至ることができたことはとても大きな収穫でした。
また、多くの学会発表に触れて多くの刺激を受けました。今回の経験を忘れずにこれからも 診療に励みたいと思います。 元山 天佑
小尾は、ランチョンセミナー4 「慢性肝炎から肝癌における治療マネージメント」で、「肝癌治療と肝癌治療後のマネージメント」と題して、当科での無痛ラジオ波焼灼療法、1554例のTAEの成績、649例の動注化学療法と179例の全身化学療法の成績さらに、東京大学消化器内科五藤先生がまとめられたラジオ波焼灼療法後のウイルス駆除の有効性について発表しました。口演4 「TACEの工夫と進歩」のセッションでは「当科におけるTAE-1500例の検討-」、ワークショップ2「肝外性再発(転移)の診断と治療」のセッションでは、「進行肝細胞癌に対するインターフェロン併用5FU全身化学療法」を発表しました。
発表中の小尾です。
一日目終了後、研究会主催の全体懇親会がありました。国立がんセンターの高安賢一先生より、リピオドールを最初に使った経緯などをお伺いできてとても有意義な時間でした。この後は、東京大学消化器内科椎名秀一朗先生にご指導いただいた仲間が集まり懇親会、その後中洲に出て、屋台の博多ラーメンで〆をとりました。
懇親会にて、
JR東京病院赤松先生、当院元山先生、東京大学消化器内科五藤先生
初夏の博多は、山笠祭で街中が盛り上がっていました。学会の早朝は、観光を兼ねて街をジョギングしています。その途中に撮った写真です。早朝の街を走りながら、次回の研究会に向かって、さらに肝癌と対峙するパワーが湧いてきました。
山笠の山車です
山笠祭の山車はこの櫛田神社を目指して街中を凱旋します
最後にはなりましたが、留守を守ってくれた佐藤隆久先生、菅田美保先生を始めとする東京大学消化器内科の先生方、誠にありがとうございました。この場を借りて感謝申し上げます。