2014年1月29日水曜日

学生実習 

みなさん、こんにちは。

いかがお過ごしですか?

 今日は、東京大学医学部4年生 (M2) の病院実習でした。

 医学部は6年制です。最初の2年は教養課程で見識を深めて、3年目からの専門課程で基礎医学と臨床医学を4年間みっちり学ぶことになっています。しかし習得する知識や技術が増えてきていることや、医師国家試験の時期が早まった(僕の頃は卒業してから試験、合格発表は5月の連休過ぎ、仕事始めは6月1日でした。)こともあり、教養課程と専門課程の区切りが無くなりつつあります。良い意味での6年一貫教育です。

 大学病院は高度な医療を提供していますが”医学部付属病院”と名前が示すように、学生の指導も重要な使命です。

 大学病院の学生実習は、クリニカル クラークシップ (Clinical Clerkship) というシステムで行われています。これはただ見学するだけではなく、学生が医療チームの一員として実際の診療に参加して、実践的な臨床能力を身に着けさせる”参加型”の実習を目指しています。

 クラーク(Cleark)とは、一般に事務員を意味しますが、もう一つ店員という意味もあります。学生が医師の指導の下で、クラーク(店員=現場の第一線を受け持つ)として、患者さんを受け持ちながら、実際の医療を習得することができます。患者さんにも協力して頂くわけですから、学生も自らの主体性と責任感を持って学ぶことが求められます。

 当院は外部病院実習(半日)の一端を担っていますので、今回は3名の学生さんを担当しました。大学と比較して、病気が進行した患者さんが多いのが当院の特徴です。入院中の患者さんに協力して頂き、腹水や黄疸、浮腫など肝臓に関連する症状の所見の取り方、コミュニケーションの取り方などを短い時間ではありますが、一緒に学んでいます。



 さらに、医療費の問題や過疎地の医療、そして自分が病気になったらどうして欲しいかを、一緒に考えてもらっています。今週は、金曜日にも帝京大学で学生実習を担当します。

 若者たちが自分で考えながら成長する姿をみるのは、とても楽しいです。でも、そういう年齢なっちゃったかなぁって・・・まだまだ、ねっ。

2014年1月26日日曜日

インフォームド・コンセントとムンテラ

みなさん こんにちは
いかが お過ごしですか?

 さて、今日は"I. C."について、お話をしましょう。


 別に僕の考え方を押し付けるつもりは毛頭ないので、そうは思わないよっ ていう人がいてもいいんです。だから世の中面白いわけで・・・


"I. C."って言葉聞いたことありますか?


 病院で、最近、う~ん、この10年ぐらいかな?(少なくとも僕が医者になった頃は説明とムンテラでした)欧米から日本に入ってきた言葉です。「先生っ! ○○さんが、IC希望していますよ」ってな感じで使われますが、これは誤解だと思うんですよね。"I. C."は、informed consent の略語です。




"I.C."とは、直訳すれば、正しい情報を得た上での合意っていう意味です。特に医療行為(検査や手術など)を受ける際は、利点や欠点(合併症など)良く説明を聞いてから、検査や治療に納得してもらうわけです。当然、手術など治療の根幹にかかってくる内容であれば、一人の先生だけではなく、他の先生の意見も聞いた方が良い場合もあるでしょう(これはセカンド・オピニオンって呼ばれています)。


 正しい情報を得た上で、検査や治療を受けるのも、受けないのも、患者さんの自由ってことになっています。まあ、いかにも米国(ギスギスした訴訟社会)らしい考え方ですが・・・




 この"I.C."っていう言葉 だけが一人歩きして、全てが"I.C."で片付けられるのが納得できないんですよね。僕は。


 例えば検査とかであれば、I.C.で良いと思うんです。でも、病気についてはどうでしょう?


誰もがなりたくて病気になった訳ではありません。「何で僕が?」 「なんで私が?」当然の思いだと、思います。病気は全て治るわけではありません。治らない病気にかかったら、なおさらでしょう。


僕が病気になったら、病気を受け入れられるかなぁ?って思っちゃうんです。たぶん無理だろうなぁって・・・。


 自分が出来ないことを、人に押し付けたくないんです。だから病気そのものや、病状については、I.C.っていう言葉はフィット(合わない)しないんです。僕だったら、いくら説明されても、同意できないでしょう(ひねくれていて、すいません)。ですから、ここで必要な言葉が”ムンテラ”なんです。


 ムンテラとは、ムント・テラピーの略語です。ドイツ語で口のことをムント、テラピーは治療ですね。

旭中央病院時代の恩師である浅田学先生が教えてくれました。「小尾サン、知ってるかぁ?ムンテラってどういう意味か。」「ムント・テラピーだよ。ちゃんと言葉で治すんだよ。」っておっしゃっていました。

 病気になったとき、「何で俺が・・・」ってなった時、仕方なく、病気を受け入れなければならないんだと思います。とても納得はできない、でも仕方がない・・・そんな感覚でしょうか?仕方がないながら受け止める。そうしないと前に進まないから・・・。そのお手伝いが”ムンテラ”だと僕は思います。

2014年1月25日土曜日

第9回日本肝がん分子標的治療研究会

みなさん こんにちは
いかがお過ごしですか?

1月22日水曜日には、肝硬変における体液貯留フォーラムという研究会が開催されました。以前杏雲堂病院で一緒に働いてくれた大木隆正先生(現三井記念病院 消化器内科)が、講演してくれました。


 また、特別講演では浮腫とアクアポリンについて、東京医科歯科大学腎臓内科の佐々木成先生が講演してくださいました。細胞の不思議に迫る興味深いお話でした。またここでも内容を紹介したいと思います。

1月24日金曜日、ミーティングがあり Shez Inno に行きました。現代の名工である井上旭シェフが創るお料理を堪能しました。


そして今日25日、第9回日本肝がん分子標的治療研究会が東京で開催されました。分子標的薬とは、細胞のシグナル伝達分子(指令)を阻害(邪魔する)する薬です。現在肝臓では、ネクサバールだけです。



今回の会長は、東大病院時代から現在でも大変お世話になっている、高山忠利先生(現 日本大学 消化器外科)です。高山先生のお蔭で共催シンポジウムで発表させていただきました。

門脈腫瘍浸潤症例へのソラフェニブ開始時期について発表させて頂きました。




その後過門香 上野バンブーガーデン店で、大学病院肝臓グループの新年会に参加しました。希望に満ちた若い先生達と会って、楽しかったです。飲み放題プランだったのですが、ここのソフトドリンク、マンゴージュースにココナッツミルク、既製品なんだろうけどとっても美味しかったです。

2014年1月21日火曜日

試作中? 試食中?

みなさん こんにちは
いかがお過ごしですか?

先日の続きで、アミノ酸製剤の服用について、いろいろ試案しています。
食べ物に混ぜて美味しく服用しちゃおうっていう企画です。

どうやら苦味を消すより利用した方がよさそうです。

生チョコ カカオの苦味と合って大人のスイーツって感じです。言われなきゃ、リーバクトが入っているかわかんないです。

ワインゼリー 苦味を生かしてワインと合わせました。これは、ワインの香りも楽しめます。

オレンジ・マーマレード 今回最も衝撃を受けた組み合わせです。見た目は悪いですよね。黄色いツブツブはリーバクト顆粒ですからね。でもこれが結構いけるんですよね。ウソみたいでしょ。


ヨーグルトに混ぜて 上のマーマレードをヨーグルトに入れてみました。悪くないですよ。

カレー パルメザンチーズをふりかけたように白くなっているのが、リーバクトです。ちょっと苦味スパイス(リーバクト)を混ぜて、味に奥行を持たせました。

抹茶マフィン マフィンは好評です。とても薬(って言ってもアミノ酸ですが)が混ぜ込んであるなんて思えないですよ。このふくらみ加減がいいのかな?

番外編 お好み焼き これはやり過ぎかなぁ?でも出来立てで美味しかった。

みんなで楽しんじゃっています。
職員健診近いのに・・・体重、大丈夫か?(笑)

2014年1月20日月曜日

どうなるやら その3 ウイルスの特徴

みなさん、こんばんは。
いかがお過ごしですか?
今日はウイルスの特徴、他の生物との違いについてお話しましょう。
ウイルスは、ヒトなど他の生物の細胞にとりついて、自分のコピーを作れるとっても小さな(1億分の1m位)構造体です。基本構造は不完全な遺伝子をタンパク質の殻で包んだ恰好をしています。


 全ての生物は、細胞を基本構造として、自分自身で生きて増殖できます。ですから自身の細胞を持たないウイルスは、生物とは言い難いわけです。でも自身の遺伝子をもち、他の生物(宿主)を利用して増殖するウイルスはまるで生き物ですよね。ウイルスに感染された宿主は体調を崩します。ウイルスが病原体である理由はここにあるんです。

 生物の最も基本的な構成単位である”細胞”は、細胞膜によって外界と隔てられています。内部にはエネルギーを生み出す経路(生命維持装置)を持っていて、さらに自己複製するための遺伝情報と発現装置が備わっているんです。


 細胞が持つDNAは塩基配列(暗号)が並ぶ構造を持っています。この暗号をメッセンジャーRNAに転写して、リボゾーム(工場)に運ばれて、暗号に基づいてアミノ酸が合成され、タンパク質が作られるんです。

このように、細胞を構成単位として、エネルギー生産、自己増殖できるものを”生物”と呼んでいます。
ウイルスは細胞を持たない、つまり自分でエネルギー生産できず、自己増殖できないという特徴があります。

ウイルスは、宿主が必要なんですね。

次回はさらにウイルスの増殖に迫ります。

2014年1月19日日曜日

ウイルスの特徴 番外編

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

今日は、ウイルス関連で、現在猛威をふるっている”ノロウイルス”についてお話しましょう。



先日、静岡県浜松市で給食から大勢の児童に感染しましたね。


 正確には、ノロウイルス属ノーウォーク種です。1968年にアメリカ合衆国 オハイオ州のノーウォークにある小学校で集団感染した急性胃腸炎患者から分離されました。

 口から体内に入り、十二指腸や上部小腸の粘膜に感染し、下痢や嘔吐を引き起こします。通常1-2日で治まりますが、吐物で誤嚥したり窒息することもあるので注意が必要です。

 ウイルスは30nm (1nm=10億分の1m) ほどのとても小さな物体です。


ノロウイルス属ノーウォーク種

驚くべきことは、感染力の強さとウイルスのしぶとさです。乾燥した状態でも約2か月感染力を保ちます。また症状が治まっても1週間から1か月は糞便からウイルスは排出されます。

吐物を拭いても、ウイルスは生き残り、その場所が乾燥すればウイルスは空気中を飛び交いヒトに感染します。トイレのサンダルでも理屈は同じです。

消毒用アルコールは、ほとんど効きません。ですから一般的なブシュブシュではダメです。塩素系の消毒液が有効です。消毒薬の作り方は以前お話したとうりです。

よーく流水で洗い流す、基本的な手洗いが大切なんです。


うがい手洗いを励行し、しっかり予防しましょうね。

2014年1月18日土曜日

試作中 近日公開予定です

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

 肝臓はアルブミン等を作っていて、働きが悪くなると血中のアルブミン濃度が下がり、浮腫や腹水の原因になることは、先日お話しましたね。

 低アルブミン解消のため、アミノ酸製剤(リーバクトやアミノレバンEN) を服用して頂くのですが、アミノ酸が苦く服用しにくいことがあります。

 そこで、服用方法の工夫として、食品に混ぜる検討を行っています。どうせなら美味しく楽しく服用できればいいですよね。

 現在試作中です。完成したらレシピを紹介しますね。

量の問題でリーバクトを用いています。全てのお料理にリーバクトが混ぜ込んであります。

コーヒーゼリー
苦味×苦味が最高です

海苔の佃煮に混ぜおにぎりの具になっています。
練梅も試しました。

ガトーショコラ(悪くない)

生チョコにしました。


マフィンも美味しいよ

試食中の一コマ

2014年1月16日木曜日

どうなるやら その2 ウイルスとは

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

インフルエンザや肝炎を引き起こす、厄介な奴、ウイルスについてお話しましょう。

ウイルスの語源は、毒液を意味するラテン語 "Virus"に由来するそうです。日本では当初、"病毒"と訳されていたそうです。病毒って表現が物語っているように、昔から人々を苦しめてきたんですね。

ウイルスが発見されたのは、そんなに昔の話ではありません。

ウイルスや細菌などを研究する学問は微生物学といいますが、1674年(江戸時代前期)にオランダのレーウェンフックが自作の顕微鏡で細菌を発見したところから始まります。彼は好奇心旺盛でいろいろなものを顕微鏡で観察していきました。

小学生の時の、学習科学の付録で覗いたワクワクする世界です。


あの時のワクワクを動画で体験されたい方はこちらをクリック

1860年から1870年(明治維新前後ですね)にかけて、フランスのルイ・パスツールやドイツのロベルト・コッホが大きく発展させ”全ての感染症が病原性細菌によって起きる”と考えられていました。この時は未だ、ウイルスの存在は知られていませんでした。

フランスにある旧パスツール研究所
大学の卒業旅行で訪れました


 1892年(明治25年 杏雲堂病院創立10年目)ロシアのディミトリー・イワノフスキーがタバコモザイク病(タバコの葉っぱに斑点を作り枯らしてしまう病気)の病原が細菌濾過器を通過しても感染性を失わないことから、細菌よりも小さくて顕微鏡では観察できない病原体があることを発見しました。

1898年(明治31年)ドイツのフリードリッヒ・レフラーとポール・フロッシュが口蹄病の病原体分離から、同様の病原体の存在を突き止め、分子が細胞に感染して増殖すると考えました。

後程説明しますが、まさにこれがウイルスの特徴なんです。

B型肝炎ウイルスは、1864年(昭和39年)アメリカの Baruch Blumberg 博士によって発見されました。
B型肝炎ウイルス

C型肝炎ウイルスは。1989年(平成元年)アメリカのChiron社の研究グループによって発見されました。
C型肝炎ウイルス



ご覧のようにC型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスの半分ぐらいの大きさです。ちなみに1 nm = 10億分の1mです。

次回は、ウイルスの特徴(細胞との違い)をお話しますね。

2014年1月15日水曜日

どうなるやら (序章)

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

寒い日が続いていますよね。”北風小僧の寒太郎” がやってきましたね。



インフルエンザの予防について、昨日お話いましたが、流行ってきましたよ!うがい手洗い そして暖かくして十分にんでくださいね。

インフルエンザの原因は、インフルエンザウイルスです。C型肝炎の原因はご存じのとおり、C型肝炎ウイルスです。この ”ウイルス” っていう奴がやっかいなんですよね。



これから、飛び飛びになると思いますが、ウイルスから入って、C型肝炎ウイルス、その最新の駆除薬、さらに駆除薬にまつわる問題などに話を進めたいと思います。結果、今後どうなるんだろう? 期待と少々の不安もあって今回のタイトルとなりました。

ちょっと長くなると思うので、何回かに分けてお話します。シリーズものですね。できるだけ分かりやすく、お話を進めたいと思っています。


2014年1月14日火曜日

インフルエンザの予防

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

寒くなってきましたね。風邪の季節到来ですよ!


 食卓の上に、八角を飾ってみました。中華料理(鶏の唐揚げなど)の香辛料として使われます。この手裏剣みたいな形が良いですよね。結構個性的な匂いがあるんですよ!邪気払いにはなるんじゃないかなあって勝手に思っています(笑)。

これは、なんでしょう?

 これは、オセルタミビル(タミフル=インフルエンザの特効薬)の化学式です。オセルタミビルは、八角から抽出されたシキミ酸をもとに化学合成されました。でも八角を食べればインフルエンザが治るわけじゃあないですよ!念のため。

インフルエンザは予防が大切です。

流行前のワクチン接種 感染後に発病する可能性を低減させる効果と、インフルエンザにかかった場合の重症化防止に有効とされています。

外出後の手洗い 流水・石鹸による手洗いは手指など体についたインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、インフルエンザに限らず接触感染を感染経路とする感染症対策の基本です。インフルエンザウイルスはアルコールによる消毒でも効果が高いですから、アルコール製剤による手指衛生も効果があります。

適度な湿度の維持 空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。加湿を心がけましょうね。

休養と栄養 体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日頃から心がけましょうね。

人混みを避ける インフルエンザが流行してきたら、特に御高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、疲労気味、睡眠不足の方は、人混みや繁華街への外出をえましょう。やむを得ず外出する場合は、マスクをしましょうね。



2014年1月13日月曜日

成人の日

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

今日は成人の日ですね。

もともと成人の日は、1948年公布・施行された祝日法により制定されました。
終戦後の虚脱状態にあった当時、次世代を担う青年たちに明るい希望を持たせ励ますために企画された”青年祭”が発端のようです。埼玉県蕨市の当時の青年団が企画したそうですが、短期間で全国に広がり、法として制定された歴史があります。


地元、北杜市の成人式
(もちろん最近の)

テレビニュースで、成人の日のインタビューに答えている若者の眩しい姿に、自分もあんな時期があったなあ・・・と回顧しました。20歳を迎えた若者は、いろいろなこと、考えていましたよね。


後列真ん中が20歳の僕です。
大学の吹奏楽部定期演奏会のスナップ。
トロンボーンを担当していました。

 成人の日は、”大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます”日ってことになっています。

20歳を迎えた若者に、50歳近いオジサンからの熱いメッセージです。

可能性は無限大だぞ!!

2014年1月12日日曜日

それぞれのゴール

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしですか?

僕の一番好きな山(甲斐駒ケ岳)の山頂です。
いつかは、山頂に立ちたいと思っています。

病棟は山小屋の話の続きで、山頂の話です。

前回までのお話は、↑(上の病棟は山小屋)をクリックして下さいね。

 山小屋では目指すゴール(山頂)は同じですが、病棟は少し違います。
 もちろん、早くきれいに治すことが一番です。この場合、ゴールは明確に決まっていて、ゴールに向かうコースも決まっているので、ある意味簡単ですね。決まったコースを確実に歩きさえすれば辿りつきますもんね。
 病気で言えば、良性の疾患や、悪性疾患でも病期が浅い(早期)場合は、この範疇に入ります。ガイドラインに沿って、安全・確実に治療すれば治っちゃうからです。


全ての病気が綺麗に治っちゃうのが理想ですが、現実はやはりまだ厳しんですね。もちろん諦めてはいませんが、治らない病気があることもまた事実です。この場合、まずゴールの設定から始まります。

どこに目標(ゴール)を置くか?

 病気の状態、患者さんの体調、患者さん自身の気持ち、患者さんを取り巻く環境(社会生活)、ご家族の気持ち、さらに医療制度・社会保障システム、これら全てを勘案してゴールを決めていくんです。せっかく決めたゴールですが、このゴールは常に再検討され、必要に応じて再設定しなければなりません。


 ゴールが設定されたら、次はコースです。なかなか最短な道はありません。出来るだけ辛くないように、少しでも楽になるように、と願いながら、コースを探していきます。時には迷うこともあるかもしれませんが、でも一緒に歩いていきます。山登りも一人ではできませんよね。パーティーを組み、助け合いながら登っていきます。そう、一緒に力を合わせることによって、困難に立ち向かうことが出来るのんです。

 それぞれのゴールに向かって、一緒に考えながら歩いていく。そういう医療を行いたいと思っています。ですから、困ったことがあったり、わかんないことがあったら遠慮なく相談してくださいね。



2014年1月11日土曜日

腹水・浮腫の新しい治療

みなさん、こんばんは。
いかがお過ごしですか?

 肝臓がくたびれてくると、むくみや腹水という症状が出てきます。なんでむくみや腹水が出るんでしょうか?

肝臓は、ヒトに必要な物を作ったり、貯めたり、不要な物を分解したりしてくれています。ヒトの化学工場といわれるゆえんですね。アルブミンという大切なたんぱく質も肝臓で作られているんです。肝臓が疲れて、働きが低下すると、血液中のアルブミン濃度も少なくなります。
血中のアルブミン濃度が低下すると、血管は血液中のアルブミン濃度を保とうとして、血液を濃縮します。血管から浸み出した水は行き場所を失って、むくみや腹水となります。血液が濃縮されるため、循環血液量が低下して腎機能も低下させます。腎障害のためむくみや腹水は溜まりやすくなります。さらに肝臓が硬いと、肝臓に流れ込む門脈という血流が流れにくくなり、腸管がむくんで腹水が溜まりやすくなります。

腹水は、お腹の張りや、急激な体重増加で、気付かれることが多いです。
では、治療はどうするのでしょう?

まずは、無理をせず安静が大切です。さらにアルブミン増加のため、アルブミンの材料である、分子鎖アミノ酸製剤(リーバクトやアミノレバンなどですね)を、服用してもらいます。また利尿剤(ラシックスやアルダクトンですね)を併用して、余った水分をおしっこにして追い出します。

これでも治まらない場合、アルブミン製剤(献血由来です)の点滴を行ったり、お腹に針を刺して抜き取ったりしています。

従来の利尿剤では、利尿の際に水のみならず、電解質(ナトリウムやカリウム)も強制的におしっこにして出してしまうのが問題でした。またある意味腎臓に鞭を打っているのでいるので、増量すると腎機能が悪化する問題がありました。


昨年9月にサムスカというお薬が開発されて認可されました。このお薬は、従来の利尿剤と異なり、水だけをおしっこにして出してくれる特徴があります。従来の利尿剤にこのお薬を上乗せすることによって、さらにむくみや腹水をコントロールする可能性が増しました。

本日、全国から関係する医師が集まり、使い方などを勉強する学術集会が開催されました。

導入には電解質バランスや肝機能を注意深く観察する必要があるので、入院が必要ですが、新たな選択肢が増えたことは朗報ですね。

勉強後は、大学病院の仲間たちと神楽坂で新年会を行いました。おでん屋さんのビーフシチューと卵かけごはんが絶品でした。


2014年1月10日金曜日

肝臓友の会講演会のお知らせ

みなさん、こんにちは。
今日は、B型肝炎の患者さんに講演会のお知らせです。

 大学病院時代の先輩医師である 加藤直也先生(現、東京大学医科学研究所附属病院 特任准教授)が、『B型肝炎、これからの治療について』というタイトルで講演します。

加藤直也先生

 とても気さくで優しい先生です。きっとわかりやすく病気のこと、治療のことについて、最新の知見をお話してくれると思います。

 会場も行きやすい都心のど真ん中にあります。是非、参加して最新のお話を聴いていただき、ご自身の療養に役立てて頂ければ幸いです。

日時:平成26年1月19日 日曜日 14時から16時(13時30分開場)

場所:イイノホール 霞が関から徒歩1分

主催:NPO法人 東京肝臓友の会
    全国B型肝炎訴訟東京弁護団・原告団

申込:不要

【利用可能路線】
  • 東京メトロ 日比谷線・千代田線 「霞ケ関」駅 C3出口 徒歩1分
  • 東京メトロ 丸ノ内線 「霞ケ関」駅 B2出口 徒歩5分
  • 東京メトロ 銀座線 「虎ノ門」駅 9番出口 徒歩3分
  • 東京メトロ 有楽町線 「桜田門」駅 5番出口 徒歩10分
  • JR山手線・京浜東北線・東海道線・横須賀線、都営地下鉄浅草線、
    ゆりかもめ 「新橋」駅 徒歩10分
  • 都営地下鉄 三田線 「内幸町」駅 A7出口徒歩3分